義兄と結婚生活を始めます
あおいの前に置かれていた、オレンジジュースの氷がカランと音を立てて一部が崩れた。


「…で…でも……お父さんの、仕事にも…影響が…」

「…あぁ。大丈夫よ。別れた後のことは、私がおじ様を説得して、お仕事を続けられるようにお願いするから。簡単な話よ。あなたは自由になって、同年代の男の子と付き合える。お父さんもお仕事を無事に続けられる、でしょう?」

「そう……です、ね……」

「私と和真の婚約の話も戻る可能性もあるし、和真は小鳥遊の跡取りだから、私が支えたいの。あなたに協力してほしいわ。だから、別れてもらえる?」


ニコニコと笑顔でカップを置くと、ほとんど飲み終えていた。


「……はい…」

「ありがとう!次は別れた報告のお茶をしましょうね。あぁ、子どものあなたに払わせることはしないわ。大人の私が持つから。それじゃあ、ごきげんよう」


由梨子は立ち上がると、会計先で店員に説明して支払いを済ませ、店から出て行った。
一人残ったあおいは、しばらく俯いていた。


(…和真さんに、無理をさせてたのかな…)


和真と行った水族館での出来事や毎日の生活のこと、一緒にココアを飲んで談笑する場面を思い返す。
最初の頃よりも、たくさんの表情を見せてくれる和真が、どんどん頭の中を占めていった。

ふと、由梨子が言った『同年代の男の子』の言葉を思い返し、祐希の顔が浮かんだ。
あおいは握っていた拳にさらに力を込める。


(急に私から別れる話を持ち出すのも変…だし…、和真さんから言ってもらえるように…すればいい…んだよ、ね……)


カランと、残っていた氷がオレンジジュースの中に沈んだ。
同時に、こぼれた涙が手の甲に落ちた。


「…あれ…?」


自分でもびっくりするあおいは、慌てて鞄からハンカチを取り出す。
取り出す間も止まらない涙を、急いでハンカチで拭った。

しばらくして、ようやく止まった涙の後に飲んだオレンジジュースは、氷が溶けて薄い味となっていた。











自宅のドア前で、何度も深呼吸するあおいは、なかなか入る決心がつかない。


(ちゃんと、いつも通りの挨拶をして、すぐに部屋に行く。それで勉強する!テストも近いし…!大丈夫、大丈夫ですよ!)


「すぅー……はぁ〜……っ」


カードキーで解錠すると、玄関のドアを開けた。
少し急ぎめに靴を脱ぎ、リビングへ顔を出した。

和真の姿はなかったため、どこかホッとしたような残念なような気持ちになる。


(…って、ダメ!早く部屋に行こ)


手を洗って自室へ向かうと、隣の部屋から和真が出てきた。

< 139 / 234 >

この作品をシェア

pagetop