義兄と結婚生活を始めます
そして、気づけば帰宅のチャイム・曲が流れ始め、二人は片づけをした。
教科書を持って、読みながら歩くあおいの隣で、まだ解説を続ける祐希。


「あ、なるほど。だからこの意味につながるんだ」

「そうそう。やっぱ暗記系は得意だな、あおいは」

「ありがとう!」


笑顔を見せるあおいに、祐希は気になることを問いかけた。


「…なんかあった?」

「え…?」

「クラスの奴に何か言われたりした…?その…この前、小鳥遊さん来てたときから…その、俺もいろいろ聞かれたからさ…」

「あ…そ、そんなことないよ!…」


思わず、由梨子のことかと思って身構えてしまった。
玄関につくと、変わらず三森がドアを開けて待ってくれており、祐希に別れの挨拶を告げると車に乗り込んだ。

車が発車すると、あおいは俯いた。


(一瞬…由梨子さんのこと話しちゃいそうだった……返事を待ってもらってる人にする話じゃないよ…)


小さくため息をこぼすと、一日中隠していた不安が心を覆う。
車の窓から見える景色、行き交う人をぼんやりと眺めた。



帰宅して、いつも通りに夕飯の支度を始めるあおい。
ちらちらと、時計と玄関の音がしないか気にしながら作っていると、いつもより早くに作り終えていた。

和真に向けて、勉強する旨のメモをダイニングテーブルに残して、自室に戻る。
メモ通り、ノートを取り出して祐希に教えてもらった部分の復習を始めた。

すると、玄関が開く音が聞こえると、書いていた手を止めた。
和真が帰ってきたことがはっきりとわかれば、緊張感が出てくる。

和真の方は、テーブルに置かれたメモを読むと、邪魔をしないようあおいの部屋を通り過ぎて自室へ入って行った。
少しすると、再びリビングへ戻り、朝と同様にラップを掛けられた食事に手をつけた。


「……」


黙々と食べ進めていると、視線はリビングの出入り口へ向いてしまう。
皿に盛られたおかずをきれいに完食すると、食器を下げて、コーヒー用のお湯を沸かし始めた。

あおいの部屋へ行こうか悩み、足が動きかけたが、勉強を頑張ろうとするあおいの邪魔をしないよう踏みとどまった。
お湯が沸けると、コーヒーをゆっくり淹れていく。

そして、マグカップを持って自室へ入っていった。

あおいは、聞こえてくる音に終始、耳を傾けていたため、ペンを握ったまま動かずにいた。
しかし、和真が自室に戻ったことで、ふーっと息を吐いて、ようやく動けるようになった。

ただし、勉強の続きではなく、机に伏して、隣の和真の部屋側の壁をじっと見つめる。


「……はぁ~…」


小さくも長いため息をついて、不安になる表情を腕の中に隠した。
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