義兄と結婚生活を始めます
腕組みをして柱に寄りかかる和真は、とても絵になる、なんて考えを巡らす一方で、勢いよく立ち上がったあおいは、一生懸命理由を考えた。


「…え、と…」

「言ってくれないんですか?」

「…え…?」


少しずつあおいへ近づいていく和真に気付くと、半歩後ずさるあおい。
和真の質問の意図も相まって、思考が追い付かないあおいは、顔を逸らして目を泳がせた。


「ただいま」

「……お…おかえり、なさい…」


スッと手を伸ばすと、あおいの頭をポンポンと撫でる。
今までされていた行動だったはずなのに、久しぶりにされた反動なのか、あおいは体ごと和真から大きく離れた。


「……」

「あ……」


和真は何も言わず、じっとあおいを見つめた後、視線を少し落としてリビングから去って行った。
追いかけられない代わりに、顔を真っ赤にさせるあおいは、じんわりと浮かんでくる涙を拭う。

途中だった料理を仕上げると、書き置きをして、自室に戻ったあおい。
ベッドに横になると、枕に顔を埋めた。


(ごめんなさい…)


何度も心の中で謝るあおいは、堰を切ったように涙が止まらなかった。
避けてしまったときの和真の表情、目が忘れられない。


「…ひっく…ぅ…」


枕に埋めた声は、あおいの部屋の中だけに響いた。
しばらくして、泣き疲れたあおいは、涙を流したまま眠ってしまった。










自室に戻った和真も、椅子に座って腕置きに頬杖をついて、ぼんやりしていた。
自分があおいに何かしたのかを考える中で、不意に祐希との会話も思い出す。


「…はぁ……」


あおいの頭を撫でた手を見つめると、ため息をついた。
すると、鞄に入れていたタブレットから通知音が鳴った。

気を紛らわせるために、気だるげにタブレットを取り出し、画面操作を始める。
届いた通知を開いて見ると、急いでタブレットを置いて、スマホを手に持つ。

しかし、一旦自分を落ち着かせるために、深呼吸した。
改めてタブレット画面を開いて、ゆっくりとスクロールしていく。

じっくり見た後、スマホを持ち、タップすると耳に当てた。
数回のコール音が鳴った後、通話相手の慌てる声が聞こえてきた。


「も!もしもし!?小鳥遊さん!?」

「夜分にすみません、海崎さん。お姉さんの件で進展がありましたので一報を入れておこうと」

「え!?すみれ、見つかったんですか!?」

「大体の場所はつかめましたが、本人にまだ接触はしていません」


すみれとあおいの父親は、驚愕の連絡に声が震えているのがわかる。
同時に、所在がわかったことで、安堵の声も混じっているようにも感じた和真。


「そ、それで…すみれはどこに…!?」

「海外…フランスにいます」

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