義兄と結婚生活を始めます
「なるほどね~…海崎さん、安心しただろ?」
「はい。お礼を言われましたが、まだ見つかっただけで、戻られるかわからないので、断りました」
「ふ~ん。…じゃあ、戻ってきたら、あおいちゃんは元の生活に戻るってわけだ」
涼介の言葉で、タブレット操作をしていた手が止まる。
チラリと和真に視線を向けると、涼介はポケットに手を入れて顔を覗き込んだ。
「あおいちゃんは自由になるわけじゃんね?」
「…そうですね」
「で、本来のお姉さんと結婚して、正式な夫婦になるわけだ?」
「……」
「偽装夫婦じゃなくなるわけだ?」
「……」
返事をしなくなった和真を見て、笑みをこぼしていくと、ついにはニヤッと笑った。
「あおいちゃんがいなくなるってこと、わかるよな?」
「…そのくらいわかりますよ。元々、社長が無理に代役を押し付けたようなものです」
「ふ~ん?じゃあ、俺、担当先の人と面会すっから、またあとでな」
和真の言葉を聞いて、それ以上の質問はせず、肩をポンッと叩く。
涼介はデスクから離れると、和真はしばらく動くことをしなかった。
脳裏によぎったのは、あおいの顔。
何かを堪えるようにグッと口を閉じると、タブレットを鞄に入れてデスクに着いた。
…ー
あおいと祐希は食事を終え、デザートを食べながら次のプランを考えていた。
「この後どうする?映画…行く?」
「んー…でも、あの映画はちーちゃんが見たがってたから…私はやめとこうかなって、思うんだけど…。あ!祐希くんが見たかったら全然…」
「いいよ、俺もあおいと同意見」
スプーンでアイスを掬って食べつつ、うーんと考えていたあおいは、思い切って提案してみる。
「はい。このまま学園の自習室で復習会するのはどうでしょうか?」
「………採用」
あおいをビシッと指さすとキメ顔で決定を下す祐希。
それが面白くて吹き出すあおいは、声を出して笑ってしまった。
二人はカフェを出ると、駅に向かって歩き出した。
あおいは初めて交通機関を使って学園に行くので、祐希について歩く。
電車に乗っている途中、ふとあおいはスマホを取り出して、和真にメッセージを打った。
『学園で友達と勉強して帰ります』
昨夜に書き置きしていた内容が「遊んで帰る」だったため、変更となった予定を一応連絡しておく。
(…あれ…?これは…由梨子さんのいうことと逆のことしてる…?でも、予定変わって迷惑かけたら嫌だし…うーん…)
「あおい」
「…あ、なんでもない!」
パッと顔を上げると、スマホを鞄に入れた。