義兄と結婚生活を始めます
家に入ったものの、その場から動かない和真は、あおいへふり返った。
見下ろす和真を見上げるあおいは、少し体が震えた。


「あ…あの、ごめんなさい…予定…変更になって…」

「それで?」

「えっと…連絡を入れるのが遅く」

「違います」


トンっと、あおいの顔の横に手をついた和真。
あおいは、ビクッとすると、すでに背がついているドアに、さらに押し付けられる感覚になる。


「友人と勉強していると言っていた友人は、草野くんですね?」

「…は…い…」

「僕を避けて、草野くんとは笑っていたんですよね?」

「……っ…」


和真の視線から逃げようと、思わず顔を逸らすあおい。
しかし、和真は反対の手で持っていた鞄をその場に落とし、逸らした先にその手を置く。


「草野くんが褒めると、笑顔で喜んでいたそうですね?」

「…あの、和真さん…」

「僕の手は避けるのに、草野くんの前では許すんですね?」


顔を近づけて問い続ける和真から、とうとう逃げ場をなくしたあおいは、顔を赤くして和真と目を合わせた。


「…僕以外で、笑わないでください…喜ばないでください…」


あおいの額と自分の額をコツンと合わせて、ハァッと吐息をもらす。


「…か、和真さん…」

「ずっと避けられるのは、さすがに堪えます…」

「ご、ごめんなさい…」

「はい。だからもう少しだけ」


ドアに着いていた手はズルズルと上に上がり、腕全体をドアにつけた。
まるで抱きしめられているような状態と、至近距離の和真にあおいは真っ赤になる。

あおいの鼓動は、自分でもわかるほど速く脈打っていた。
和真はゆっくりと額を離すが、腕はまだ逃がさない。


「あおいさんとご飯を食べたいです」

「は、い…」

「あおいさんに“おかえりなさい”を言われたいです」

「は、はい…」

「あおいさんと一緒にココアを飲みたいです」

「はい…」


今度は、あおいの小さな肩に額を乗せ、耳元で囁いた。


「今言ったこと、してくださいね」


それだけを言い残すと、ようやくドアから手を離し、あおいを解放する。
真っ赤な顔のまま見上げていたあおいに、フッと微笑むと、自分は家に上がり自室へ向かった。

足がガクガクしていたあおいは、壁に寄り掛かりながら、なんとか靴を脱ぐがそこから動けなかった。
しばらく呆けていると、着替えた和真が戻ってくる。


「……あぁ。失礼」

「あ…!」


あおいの状態を察した和真は、すぐさま横抱きにしてあおいをリビングへ運んでいく。
もう思考が追い付かないあおいは、声も出せずに口をパクパクするだけだった。

リビングに入ると、そのままソファーへ座らせる。
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