義兄と結婚生活を始めます
25話
少し驚く和真は、片方の手であおいの涙を拭う。
和真の中でも、すみれの所在がわかったことで、あおいが無理をしてきたのかと考えてしまった。


「すみません。僕の意見ばかりで」

「そんなこと…!」

「でも、僕にとってあおいさんは大切な人です。ただ…草野くんとの約束は…断っていただけたら…と。いえ、あおいさんの意思が大切ですね、すみません」


"大切な人“
この言葉の意味を聞きたいのに、怖くて聞けない自分にまた泣いてしまう。
ポロポロと涙が止まらないあおいを見ると、和真はあおいの後頭部に手を回す。

そして、自分の肩の方へ寄せて、ポンポンと優しく頭を撫でた。


「困らせてしまいましたね…」

「……っ」


声の代わりに、頭を小さく左右に振るあおい。
ただ、少しだけ、この居心地の良い和真の隣にいたい、と思ってしまう自分がいることに気づいた。


(…私だけにしてくれたらいいのに……)


優しく撫でる大きな手に負けないほど、心の中は欲張りになっている。
しかし、由梨子から言われた〔子ども〕という自分は、和真に相応しくないのかもしれない、という不安があった。


「…落ち着きましたか?」

「は、はい…」


そっと離すと、あおいは小さく頷いた。
そして持っていた自分のマグカップの中のココアを、欲張りな本音と一緒に飲み込んだ。


「あの…聞いてもいいですか…?」

「なんでしょうか?」

「お姉ちゃんが見つかったら、私は明望学園を辞めなければいけませんか?」


意外な質問に驚く和真は、少し考えた。


「希望すれば、おそらく在学はできますが…草野くんがいるからですか?」

「ち、違いますよ!お友達もできたし、勉強もやりがいあるなって、思えてきたから…できれば通いたいなって…」

「…明望を楽しんでいただいているようで、嬉しいです。草野くん以外では」

「……あの…和真さん…祐希くんのこと、何か怒ってます?」

「いいえ」

祐希への言動が気になり始めたあおいの問いを、すかさず否定する和真は、涼しい顔をしてココアを飲む。

そして、カップを持つと、立ち上がった。


「少し、調べ物があるのを思い出しました。ご飯を食べる際に声をかけてください」

「わかりました。私も着替えますね」


あおいも続いて立ち上がると、それぞれカップを持って、自分たちの部屋へ入っていった。

部屋に入ったあおいは、カップを机に置いてひと通りの着替えを済ませると、ベッドに横になる。

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