義兄と結婚生活を始めます
…—
土曜日の11時45分、前回同様、Nカフェの前で由梨子を待つあおい。
今日に至るまでに、なるべく平常心で過ごしていたつもりだったが、誰もが心配する言葉をかけてくれるほど隠せていなかった。

スマホで時間を確認すると、約束の時間5分前になっていた。
すると、あおいの前に一台の車が止まる。

ドアが開けば、スラリとした足が見え、出てきた人物は由梨子だった。


「先に席を取ってくれてないの?」

「あ…っ、す、すみません…!」

「いいわ。さ、入りましょ」


さっそく由梨子から注意を受けると、後に続いて入店する。
店員と会話した由梨子は、案内された席に着いた。

あおいも対面席に座ると、鞄を膝に置いた。


「あの!前に言っていたこ」

「あぁ。待ってちょうだい。飲み物が来てから話しましょ?時間はあるんですもの」


あおいの言葉を遮り、にっこりと笑う由梨子。
しばらくすると、自分では頼んではいない飲み物が運ばれてきた。

由梨子の前には、前回同様カフェラテ、そしてあおいの前にはオレンジジュースとフレンチトーストが置かれる。


「…え…っと…、私頼んでな」

「あら、好きだと聞いたわよ?遠慮せず食べてちょうだい。大人に甘える方が、子どもらしくて可愛いわよ?」

「…い、いただきます…」


フォークを取ると、ゆっくりと丁寧に食べようとするも、緊張から手が震えた。
ようやく一口食べるものの、味をしっかりと感じられない。

大好きなフレンチトーストが、グニグニとした柔らかい固形物と感じるのは、初めてだった。
由梨子は、温かいカフェラテが入っているカップを取り、一口ずつ味わうように飲んでいく。

あおいも、フレンチトーストを食べ終えた頃、カップを置いた。


「それで?連絡がまったく来ないことにも驚きだけど、どうなっているのかしら?」

「…か、和真さんのことは…」

「えぇ。別れる話はしたんでしょう?いいお返事はもらえたのよね?」

「わ、私から一方的に話し出すのは変ですし…それに、ゆ、由梨子さんの名前は出さないと説明もできないと思って…」


自分の爪を眺めながら聞いていた由梨子は、刺すような視線をあおいへ向ける。
ビクッと肩を強張らせたあおいは、固唾をのんだ。


「別れる話の進展はないけど、和真に何かさせる進展はあった、とでも言いたいのかしら?」

「え…?」

「和真は小鳥遊の大事な跡取りなの。おままごとに付き合わせるようなこと、いい加減にしてちょうだい。小鳥遊家にとって、和真は大切な人よ。明望に行かせてもらっているのだっておじ様のご厚意。甘えるのにも限度があるわ」

「………」

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