義兄と結婚生活を始めます
あおいはぼんやりとカップを見つめていたが、和真が持ってソファーへ向かう。


「ゆっくりしましょうか」

「…はい」


和真の後についていくと、ソファーにポスリと座り、和真からココアのカップを受け取った。
そして、和真も隣に座ると、黙ってココアを飲んだ。

ただの沈黙とココアの香りだけが漂う。


「……」

「……」


不思議なほど、緊張感もなければ、話題を探す焦りもない。
和真の横にいるからなのか、ココアの温かさからなのか、心がホッとしているのを感じたあおい。


「和真さんは、普段どんなお仕事をしてるんですか?」

「…そうですね…、自分の会社で販売している商品を売るためのルート作り、というとわかりやすいでしょうか。相手の企業に商品を知ってもらい、そこの企業で売ってもらうための契約もとりますよ」

「すごく大変そう…」

「そうでもありませんよ。自分の商品の良いところをしっかりと説明させてもらえますし、相手も納得した上で購入を決めますから」

「じゃあ、涼介さんや由梨子さんたちと一緒にしてるんですか?」



ココアを飲んでいる最中に出てきたあおいの質問に、少しだけ考えて答える和真。


「まぁ…それはそうですが……役割分担と言いますか…部署全体で取り組んでいますよ」

「そうなんですね」

「…もう仕事に興味が?」

「あ、えっと、どんな風に過ごされてるのかなぁって…」


笑ったあとにココアを飲んだ。


「大したことはありませんよ。涼介たちと昼食を食べて働いて…を繰り返してるだけです」

「涼介さん、明るそうな人だから、たくさん話題持ってて楽しそうですね」

「……僕だって、あおいさんとなら、たくさん話せるようになってます」



クスクスと笑い始めたあおいの髪に触れる、じっと見つめる和真。
赤くなる顔が逸らせない代わりに、視線だけが和真の目を避ける。


「か、和真さんとのお話も…楽しい、です…!」

「ありがとうございます」


フッと笑うものの、髪の毛に触れる手は、離してくれない。
機嫌の良さそうな表情を浮かべる和真は、手遊びするように髪の毛を手に絡ませていく。


「あ、あの…由梨子さんってどんな人ですか…?」

「由梨子?……とても仕事ができますよ。パワフルで気は強いですが、その分人との信頼関係を構築するのが上手いので、そこは尊敬しています。…いつもフォローされているので、頭が上がらない、というのが適切な言葉かもしれません」

「フォロー……?」

「……僕の言葉選び、話し方が良くないそうです」


少しだけ落ち込むような表情と声音に感じたあおいは、ココアを飲んでいた和真の頭をポンと撫でた。
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