義兄と結婚生活を始めます
和真もココアを飲み干す。


「やっぱりあおいさんのココア、美味しいです」

「あ…ありがとうございます…」


少し口をとがらせながらも、素直に褒め言葉を受け取ったあおい。
ふと、あることを思い出した。


「あの、和真さん。話が変わるんですけど、本試験の勉強…祐希くんとしてもいいですか…?」

「……なぜ?」

「お仕事で疲れてるのに、勉強まで見てもらうのはさすがに…」

「……」


黙り込んでしまった和真を、ハラハラしながら回答を待つあおい。
しばらく考え込む和真は、ようやく口を開いた。


「…週末。週末の勉強は僕が教えます」

「は、はい…ありがとうございます…」


あおいは、了承を得られたことに少し安心すると、立ち上がってカップを置きに、キッチンへ向かった。
和真も続いてキッチンへやって来ると、あおいが進む方向へ立ちふさがる。

左右に避けても通せんぼする和真を、不思議そうに見上げた。


「和真さん?」

「……あまり、草野くんの前ではしゃぎすぎないでくださいね…」


流しにカップを置いて、あおいの頭を撫でると、自室へ戻って行ってしまった。
ぽかんとした顔で立ったままのあおいは、和真が残した言葉の意味をしばらくの間考えていた。


部屋に戻った和真は、ドアを閉めるなりすぐさま眉間を押さえて反省する。


「さすがに大人げない…ムキになるとは…恥ずかしい…」


小さくため息をついて、椅子に座ると、タブレットを開いた。
海崎すみれについての新たな報告書を読みこんでいる途中、スマホに着信が入った。


「…はい」

「こんばんは小鳥遊さん」

「どうされましたか、海崎さん」

「すみれと…連絡が、グス…とれました…!」

「それは、よかったですね」


電話越しから聞こえる涙ぐむ声にも、淡々と返す和真。


「実は、あおいに伝えるタイミングを聞いておこうと思いまして」

「……そうですね。学園の本試験が始まる前…来月頭くらいがいいと思いますよ」

「なるほど。わかりました。それから…実は…そのぉ…すみれが直接話をしたいと…」

「…僕にですか?」

「はい…番号を伝えてもいいでしょうか?」


和真の声音から感情を読み取ろうとする父親は、静かに待った。


「構いませんよ」

「あ!ありがとうございます…!では」


あおいの父親と電話が切れてから数分後、知らない番号から連絡が入る。


「はい、小鳥遊です」

「こんばんは、初めまして。あおいの姉のすみれです」

「…こんなに早く連絡があるとは思いませんでした」

「あおいと話す前に、小鳥遊さんと話しておきたいことがあったので」


初めて聞くすみれの声は、穏やかさのあるあおいと似ているが、ハキハキとものを言うところは由梨子に近い感じがした。
夜が更けるのと同時に、和真とすみれの初めての会話も深まっていった。
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