義兄と結婚生活を始めます
「どうかしました?」
「なんでもないです…」
照れ笑いをしたあおいは首を横に振って、和真と一緒にリビングへ行った。
椅子にかけていたエプロンを着けると、さっそくキッチンへ向かうあおい。
「朝食は和食にしますか?スープとかの洋風にしますか?コーヒーも飲みますよね?…あ、じゃあ洋風にした方がいいか」
和真へ質問を投げかけたはずが、独り言のような自問自答へと変わり、朝食は洋風に決まってしまった。
しかし、和真は特に何も言わず、持っていたタブレット端末を操作し始める。
「和真さん、先にコーヒー飲みますか?」
「そうですね。お願いします」
「はい!」
笑顔で答えるあおいは、さっそくお湯を沸かす準備に入った。
そして、冷蔵庫から朝食に使う食材を出して、テキパキと動く。
少し経つと、和真の前にコーヒーが置かれた。
「ありがとうございます」
「もうすぐでできますから、お仕事もほどほどにしてくださいね」
思ってもいなかったあおいの言葉に、和真は一瞬固まったが、クスっと笑った。
出来上がった朝食をテーブルに並べると、エプロンを椅子にかけて、あおいも席に着く。
「…あの…すみません…」
「はい?」
「お仕事もほどほどにって…生意気なこと言っちゃったなって…思って…」
シュンとして落ち込む表情を見せるあおいに、トーストを頬張っていた和真は少し考えてから、口を開いた。
「構いませんよ。あおいさんから言われるのは新鮮ですし、素と言いますか…リラックスして話してくれるあおいさんを見られました」
「…でも…」
「あぁ。これはそうですね、“嬉しい”という言葉が正解でしょうか?」
「えっと…そう…かも……?」
気恥ずかしそうに、和真を見上げるあおいは、頬を赤くする。
微笑んだ和真はコーヒーを飲んで、あおいの表情を見ないふりをした。
「あの、和真さん…ひとつお願いをしてもいいですか?」
「なんでしょうか?なんでもどうぞ」
「本試験に向けて、早めに勉強を教えてもらえませんか?もちろん、忙しくないときでいいので!」
「では、朝食を終えたら始めましょうか」
「え!?お、お休みの日はさすがに…」
オロオロするあおいの言葉を不思議に思ったのか、和真は首を傾げた。
「僕の休日を好きに使っているだけですが?」
「…あ…ありがとうございます…」
和真の言葉に一理あると納得したようで、お礼を伝えるあおいは食べるペースを早めた。
すでに食べ終えた食器を下げるため、立ち上がった和真はあおいの横を通る際に頭にポンと手を置く。
「焦らないで。…時間はあります」
「は、はい…」
背後から聞こえる優しい声に胸が高鳴ってしまうあおい。
しかし、和真がほんの少し、寂しそうな表情を浮かべていることに気づかなかった。