義兄と結婚生活を始めます
コーヒーを飲む和真は、笑っていたあおいに声をかけた。


「…今日は何かありましたか?」

「え?」

「少し、元気がないように見えて…」

「……」


和真からの問いかけに驚きはあったものの、ちょっとだけ視線を落とすと、ニコッと笑った。


「えっと…うまく言えないですけど…、今は頑張ろうって思うことがありました。…言えるようになったら、和真さんに言ってもいいですか?」

「ぜひ、教えてください」


フッと微笑む和真は、あおいの頭をポンポンと撫でた。
嬉しい気持ちでいっぱいになるあおいは、和真の手にホッとする。


それから自室へ戻ったあおいは、ベッドに横になった。
一つの想い出を胸の奥にしまうように、目を閉じて眠った。
















…ー
数週間が経ち、あおいは変わらず、本試験に向けて勉強に励んでいた。
放課後のほとんどは祐希と一緒に、週末は和真の時間に合わせて勉強した。

気づけば、本試験まであと二週間。

勉強と変わらず、和真を意識しながらも、日々の生活を楽しんでいた。



和真は、早くに出社すると、会議室の一室へ向かう。
ドアを開けると、落ち着かない様子のあおいの父が待っていた。


「お待たせしました」

「お、おはようございます!」

「先日、すみれさんとお話しさせていただきました」

「そう…ですか…!こっちに戻ってくると言ってましたので、そのぉ〜…社長にもお話を…」


気まずそうに濁しつつ、和真の様子を伺いながら、歯切れ悪く言葉を紡ぐ。


「帰国はいつですか?」

「明後日の午後の便が、こっちに着くそうです…!」

「…では、あおいさんにもお伝えしてください。社長の方にはこちらから話をしておきます。…おそらく、両家での話し合いもすぐに行われるかと」

「は、はい!!」


和真の言葉に一層緊張感が走る。
あおいの父と話を終えると、会議室に残った和真はスマホを片手に、壁に寄りかかった。


「……」


しばらくぼんやりしていたが、スマホの画面をタップして操作を始めた。
そのまま耳に当てると、コール音を聞く。


「和真さん?」

「用事はありませんが、かけてしまいました」

「え…えっ!?…えっと…元気、ですか?」

「…そうですね…今、元気が出てきました」


和真は、目を閉じて、聞こえてくるあおいの声に集中した。


「大変なことがあったんですか?」

「いえ。そうでもありません。…初めてです。用事もないのに人に電話をするのは。あおいさんは嫌じゃなかったですか?」

「いいえ!う、嬉しい…です!和真さんの声、聞けたので……私の方が元気もらいました!」

「ありがとうございます。仕事に戻ります」

「無理しないでくださいね…」


その一言を聞くと、口元を緩ませながら、返事をして電話を切った。
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