義兄と結婚生活を始めます
29話
通話を終え、落ち着いた頃には各々の席について、うどんを食べていた。


「…ごめんなさい…後のこと全部お願いしてしまいました…」

「任されたことなので、問題ありま…気にしないで、ください」


少し言い方を変えてくれる和真に、気遣われていることを感じると、気恥ずかしさが出てきた。

それから食事を終えると、和真はお風呂へ向かい、その間にあおいは自室に戻って改めてスマホを開く。


MINEですみれとのトーク画面を開くと、今まで付いていなかった既読が表示されていることに、嬉しさがまた出てきた。


(……嬉しい…のに、ね…)


父親からの連絡にも嬉しさも、安堵感もあった。
しかし、和真の手前、おかしな態度もできない。


『あおい〜!連絡ごめんね!明後日、日本に帰るから、そのとき話すね!』


すみれから、久々の連絡が届いた。
その瞬間、ポタタッと、あおいの目から再び涙がこぼれ落ちる。


「…これは、嬉しい涙…だ、よぉ…」


袖でゴシゴシと拭っても拭っても、あふれ出す涙。


(…違うっ…これは嬉しい涙…!嬉しい涙…!)


「……終わっちゃう…ひっく…」


締め付けられる胸の苦しみに耐えられず、言葉が出てきた。


(和真さんと…一緒にいられなくなる…)


ついには鼻水まで垂れてきて、慌ててティッシュを取りに立ち上がる。
間一髪で間に合うと、ふと姿見に映る自分と目が合った。

赤く腫れてしまった目に、慌ててティッシュでやさしく涙を拭いた。


「…〜〜…っ!」

「あおいさん」

「ふぁあ!はい!!」


ドアのノック音と共に、和真の声で体が跳ねる。
急いでドアを開けると、乾き切っていない髪のままの和真が立っていた。


「コ、コーヒーいれますね!そろそろ暑くなりますし、アイスコーヒーにしま…!?」

「…泣いてたんですか?」

「いや!これは!その……」


和真の手が、目尻に残っていた涙を拭き取ってくれた。


「強く擦りましたね?少し冷やしましょう」

「…っ」


差し出された和真の手を取ると、そのまま手を繋いで、一緒にリビングへ向かった。
ソファーに座るあおいは、タオルを濡らしている和真を待つ。

よく冷えたタオルを持ってきた和真は、そっとあおいの目元に当てた。


「…あの…和真さん、自分で」

「僕がしたいんです」


そう言われてしまうと、タオルを受け取ろうとして上げた手は、ゆっくりと膝に戻った。
なんとなく、久しぶりな沈黙に、どこか気まずさを感じるあおい。


「お姉さん、良かったですね、見つかって」

「あ…は、はい!本当によかっ…!」


またじわっと涙が滲んでくる。
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