義兄と結婚生活を始めます
「ご、ごめんなさい!あはは…」

「大切なご家族が見つかったんです。無理をしないでください」


和真の優しさは嬉しいのに、素直に受け取れない自分がいるのに気づく。


(やだな…私……)


ようやく涙が止まると、タオルのぬるさを感が始めた。
変わらずじっと見てくれる和真の視線が、むず痒く感じる。

なかなか視線を合わせられないのに、和真の視線はしっかりと感じ、そこで意識してしまう自分に恥ずかしさもあった。


(…このままがいい………)


和真の手が触れている安心感から、自然と目を閉じてしまう。

コツン

次に目を開けると和真の顔が至近距離にあり、目元に当てられていたタオルは和真の膝にあった。
前と同じように、お互いの額がくっついている。


「…か…和真さん…?」

「少し…羨ましいです。お姉さんが」

「え…?」


目を閉じていた和真はぽつりと言葉を残し、額を離した。
フッと微笑むと、あおいの目元に触れた。


「止まりましたね、涙」

「は、はい…」


赤くなる顔を、和真が触れる手と反対へ逸らすあおい。


「こんな状態ですみませんが、あおいさんのココアが飲みたいです」

「はい…」


和真の手が離れると、さっそく立ち上がり、ぎこちなくキッチンへ向かった。
鍋を取り出していると、すでに和真が必要な物をすべて揃えてくれていた。
もう、作り方も覚えているかもしれないと感じると、クスッと笑った。

少し経つと、ココアのやさしい香りが漂ってくる。


「…和真さん、もう作り方覚えてそうですね」

「覚えていても、あおいさんが作るから美味しいです」


嬉しくなるはずの言葉は、今のあおいの胸を締め付ける。
二人分のカップに注ぐと、あおいが先に自分の分を取った。

その場に留まって、キッチンで飲むあおいを見て、和真も合わせるように自分のカップを取って、中のココアを見つめた。


「……」

「…あ」

「お姉ちゃん、明後日、日本に帰ってくるそうです!……あれ?日本…え?海外にいたってこと…?」


和真に教えたつもりでも、反復したことで、よくよく疑問になってきた。
あおいがぐるぐると考えを巡らせていると、和真はココアを飲み始める。


「何か事情があったのでしょう。明後日会えるなら、そのときに聞いてみては?」

「そう…ですよね…。そうします」


ようやく笑ったあおいを見ると、ポンポンと頭を撫でた。
やっぱり泣きそうになるあおいは、必死に堪えた。
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