義兄と結婚生活を始めます

(…ここに…一緒にいたい…)


ココアのカップに口を付け、気持ちと一緒に流し込んでしまおうと飲む。
しかし、この生活の期日が明後日までの可能性があることに、気づいてしまった。

ハッとして顔を上げると、和真と目が合った。


「…どうしました?」

「いえ…あの…明後日…土曜日…ですけど、勉強…教えてほしい、です」

「もちろんですよ。約束します。今夜はもう休みましょう」

「……はい…」


和真の言葉にホッとすると、ココアを飲み干して、カップを流しに置いた。
まだ飲み終えていない和真はカップを持ったままだ。


「…お仕事するんですか…?」

「はい。少しだけなので、心配ありません」

「…おやすみなさい…」

「おやすみなさい、あおいさん」


コクリと頷くあおいは、先に自室へ向かった。
キッチンにひとり残った和真は、まだ温もりのあるココアをゆっくり飲んだ。



部屋に戻ったあおいは、ベッドに横になる。
土曜日の“約束"は、終わりを迎えたくない、小さな抗い。

こんなことで和真を繋ぎ止めようとする自分に、由梨子から指摘された〔お子様〕がピッタリだと、皮肉にも思ってしまう。

布団を頭から被ると、ギュッと目を閉じた。


「…大丈夫…です、よ……」


泣き疲れたこともあったのか、閉じた目は開かれることなく、そのまま深い眠りについた。






あおいの部屋を通り過ぎた和真は、自室に入ると、椅子に座り、パソコンを開いた。
あおいの言葉どおり、少しの時間だけ、仕事を進めていく。

ひと段落つくと、スマホをとり、涼介に連絡した。


「はいはーい。どしたー?」

「金曜と土曜日、有給をいただきます。必要な書類と関係ファイルを送っておくので、お願いします」

「いやほんと急…。なに、明後日?話し合いすんの?」

「はい。社長室で、両家の話し合いです」


電話口から、涼介の深いため息が聞こえてくる。


「ほんっと…急な〜…。あ、てことはあおいちゃんも来るの?」

「…そうですね、当事者ですし。当日は由梨子を押さえていただけると助かります」 

「無茶言うよなぁ〜…」

「社長室なので、簡単には来れないと思いますが、念のためです」

「あいよ〜…で?」


最後の言葉を聞いて、切ろうとしていた手が止まった。


「あおいちゃんはともかく、お前も、納得してんの?」

「…お願いしますね」

「はぁ〜…あいよ〜」


今度こそ電話を切ると、別の相手に電話をかけた。


「三森さん、土曜日の送迎とは別件で、お願いしたいことが…ー」


しばらく三森と話した後、通話を切り、ドサッと椅子に座る。
< 189 / 234 >

この作品をシェア

pagetop