義兄と結婚生活を始めます
それきり、すみれは窓の方へそっぽを向いてしまった。
和真も黙ったままで、この上ないほど気まずいあおい。


「お姉ちゃん、日本にいなかったんだよね?どこにいたの?」

「…フランス」

「え!?」

「あとでちゃんと話すよ。ごめん、時差ぼけだ〜なんかクラクラする」

「えぇぇ〜…」


ポスっと、あおいの肩に頭を置くすみれは、目を閉じた。
姉の調子を心配するものの、どこかおかしく感じた。

しばらく車が走ると、大きくそびえ立つ小鳥遊社が見えてくる。


(前も思ったけど、和真さんたち、こんなすごいところで働いてるんだな〜……そして、ここの社長の息子…私、すごい人と生活してた…よね…)


改めて建物も和真もすごいと思い、視線が和真へと移っていく。
和真もあおいを見ていたのか、バッチリ視線が合うが、微笑みを見せてくれた。

不意に顔が熱くなるあおいは、パッと顔を逸らして、高鳴る鼓動に目をギュッと閉じた。


「皆様お疲れ様でございます。到着いたしました」


三森が車を停めて、すみれの乗る後部座席のドアを開けた。


「あおい、足元気をつけてね」

「あおいさん、どうぞ」


ほぼ同時にすみれと和真から話しかけられ、あたふたしてしまう。
和真は手を差し出して待っていてくれていただけに、どちらから降りるのが正解なのか、なおさらわからない。

悩んだ結果、すみれ側から降りた。
和真に対して怒っている様子のすみれを見れば、おそらく手を取ると、和真に小言を言われると考えたからだ。

行き場のなくなった和真の手は、ドアを閉めるために使われた。


(うぅ…和真さん、ごめんなさい…)


小さく謝りながら、目の前の大きなビルを見上げる。


「でっか〜い。ほんと、有名企業なだけあるね〜」

「すごいね…」

「海崎さん、荷物はご実家に運んでも?」

「…お願いします。さ、行こうあおい」


和真に素っ気なく返答はするが、三森にはにっこり笑ってお礼を伝えるすみれ。
こんな失礼な態度をとる姉を初めて見るあおいは、なにかしらの理由があるのだろうと気づいてしまう。


「社長室で話し合いをしますので、案内します」


(社長室…!?)


先に歩き出す和真に続いて、すみれとあおいも歩いて建物の中へ入って行った。
先頭を歩く和真に、多くの社員が挨拶するが、開いた口が塞がらない者がほとんどだった。
容姿端麗なすみれと、明望学園の制服を着ているあおいを見たからだ。


(…やっぱりお姉ちゃんと和真さんは目立つよ〜…)


「こちらのエレベーターです」


この場を離れたい思いが強いあおいに構わず、案内を続ける和真。
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