義兄と結婚生活を始めます
すぐに視線は教科書へ逸らされるが、どこか違う雰囲気を感じたあおい。


(…あれ…?変なこと言ったかな…)


チラッと和真へ視線を送ると、いつもと変わらない無表情でノートを読んでいた。
普段と同じ光景なのに、見惚れてしまう。


「……以前から思ってましたが…」

「はい!」

「…あおいさん」

「は、はいぃ…!」


思わず和真から顔を逸らし、膝に置いた手と一緒に目をギュッと閉じた。


「ご、ごめんなさい…!和真さん、かっ、かっこよくて…!つい見ちゃいます…!!」


耳まで真っ赤にするあおいの言葉に、少し困った表情を見せる和真。
しかし、縮こまるあおいの髪に触れ、赤い耳を出すと顔を近づけた。


「あおいさんは、可愛いですよ」


あおいは和真から耳を離すと、手で押さえる。
突然離れたあおいは、口をパクパクさせて和真を見た。


「……ふは…っ」

「〜〜か、和真さん…!」

「…失礼しました。あぁ、そうだ。以前から思ってましたが、ノートのまとめ方がきれいですね」

「祐希くんに教えてもらいました…」


機嫌良く、クスクスと笑っていた和真の顔から笑みが消え、ピタリと動きが止まった。


「…?和真さん?」

「撤回します」

「え?」

「数学からいきましょうか」


開いた教科書を置いて、さっそく指定した設問を解くようあおいに告げる。
よくわからないままでも、指された問題を書き写し、解いていくあおい。

和真は待っている間、動くペンギンのペンを見ながら、あおいの髪の毛を触ったり、ポンポンと頭を撫でたりした。


(集中!!……できない…!)


視界に入る和真の表情は見覚えがある。
水族館でペンギンを見たときの顔だ。

嬉しそうな、幸せそうな表情と雰囲気なだけに、何も言えないあおいまで嬉しくなるしかない。


「…解けました…」

「はい。合ってます。次はこの問題を解いてください」

「は、はい」


すぐに答え合わせをしてくれるものの、行動は変わらず止まらない。
ふと、次の問題に見覚えがあることに気づいた。


「あ…」

「……」

「できました!」

「合ってますよ」

「よかった!祐希くんに教えてもらったとこなので、覚えてました!」


あおいの髪に触れたまま、ピタリと止まる和真。
笑顔で答えるあおいは、解けたことにホッとした。


「…あおいさんは草野くんとの約束、どうされるんですか?」

「え……え!?」

「結婚の約束をされていたのでしょう?」

「いや…え、そ、それは…断りました…」


ボソボソと答え始めるあおいを、じぃっと見る。
耐えかねたあおいは、視線を逸らしながら口を開いた。
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