義兄と結婚生活を始めます
「………好きな人が、いるから…断りました…」
「好きな人を聞いてもいいですか?」
「…和真さんです…」
小さく答えるあおいに満足したのか、髪の毛から手を離すと、教科書のページをめくり、問題を指す。
「え…ここ、まだ習ってないです」
「はい。僕が教えます」
椅子を動かして、ピッタリとあおいの隣に陣取る和真。
肩が触れそうで触れない距離に、和真の解説が頭に入ってこない。
「…で……あおいさん、聞いてますか?」
「…っ」
ビクッと肩が跳ねるあおいを見て、和真はふと気づいた。
「…すみません。少し、詰めすぎましたね…嫌でしたら言ってください…すみません…」
「ち、ちが.!あのっ、緊張…?は、恥ずかしい…?違うな…い、一緒にいられるのは嬉しいです!でも、その…近いと、和真さんでいっぱいになっちゃって…」
距離感のなさに反省して離れようとしたが、テーブルの下で、和真の服を少しだけ掴むあおいの手は振り解けない。
「…それは…ずるいですね…」
「え…?」
和真の横顔を見れば、同じように顔を赤くしていた。
思わず、あおいの口からついて出る言葉。
「和真さん好きです…」
「……」
「……あっ!ごめんなさい!私…」
「僕もあおいさんが好きですよ」
笑わずごまかさず、赤い顔で真っ直ぐあおいを見つめる和真。
ポンポンとあおいの頭を撫でると、二人で笑みをこぼした。
今度こそ、としっかりと和真の解説を聞いたり、質問したりして、勉強を進めた。
気づけば19時前。
ほとんど休憩を取らずにしていたため、あおいは時間を見ると、急激に疲れを感じる。
「ふ〜〜…」
「すみません。結構な時間やってしまいましたね。夕食は何か買ってきましょうか?」
「いえ!作りますよ。和食と洋食、どちらがいいですか?」
勉強道具を片付けながら、冷蔵庫にある食材を思い浮かべ、献立を考え始めた。
少し考える和真は、照れた様子でボソッと答える。
「…肉じゃが…」
「ふふ。わかりました!」
ニコッと笑うあおいは、さっそくエプロンをつけて、キッチンへ向かう。
和真も椅子を元に戻して、キッチンにやってきた。
「何か手伝います」
「ありがとうございます。…ジャガイモ、洗ってもらえますか?」
冷蔵庫から食材を取り出していたあおいは、持っていたジャガイモの袋を手渡した。
触れる手と手にもどかしさを感じつつも、あおいはすべての食材を出して、髪を結った。
「…よしっ」
調理に気合いを入れると、さっそく食材を袋から取り出し、必要な分を切っていく。