義兄と結婚生活を始めます
「洗いました」
「ありがとうございます!じゃあ、そのまま皮むきお願いしていいですか?」
「はい…これは…どう使うんですか?」
「こんな、感じで…下に向かってスッと」
渡されたピーラーの使い方を学んだ和真は、すぐにジャガイモの皮むきを始める。
「和真さん、ニンジンの皮もお願いします」
「はい。任せてください」
目を輝かせてピーラーを持ち直す和真。
調理を続けながら、あおいは笑った。
「私もお姉ちゃんの料理を手伝うとき、ピーラー持って待ってました。ふふ。今の和真さんみたいに」
「当時のあおいさんの気持ちがわかる気がします」
「あははっ、ピーラー楽しいですよね」
「…お姉さんとの料理も楽しかったんですね」
「和真さんと一緒に作るのも楽しいです!」
満面の照れ笑いを見せるあおいに、手を伸ばしかける和真。
グツグツと沸騰するお湯が吹きこぼれそうな音を聞くと、あおいは和真に背を向けて弱火にした。
すると、あおいの小さな背中を後ろから抱きしめた。
「かっ、和真さ」
「すみません…少しだけ…」
耳元に落とされる吐息と声音に、顔が熱くなる。
それからまもなくして離され、振り返って見た和真の顔も真っ赤だった。
「…ダメと言いつつ…ダメですね…。あおいさんが可愛くて、その…すみません…」
「……照れてる」
俯きかける和真の顔を、小首を傾げて覗き込んだあおいは、いたずらっ子のような顔でニヤッと笑った。
「…格好悪いので、見ないでください」
「だめです。私もさっき見られたので」
クスクスと笑いながら、皮むきを終えたジャガイモを取る。
何も言い返せない和真は、ジャガイモを切って鍋に入れる様子を見ていた。
キッチンにいるあおいにはかなわない、そう感じながら、手慣れた手つきで他のおかずを作っていく様を観察した。
「和真さん、これ、混ぜてもらってもいいですか?」
「はい。これは?」
「ドレッシングです!ベースはお姉ちゃん直伝なので、自信ありますよ〜」
「…今までサラダにかかっていたのは、手作りだったんですね…市販の物だとばかり…」
改めて、海崎家姉妹の料理の腕前に驚かされる和真。
「お姉ちゃんに伝えておきますね!」
「うちの開発部にレシピを公開してほしいくらいです」
「かいは…?えっと、味見お願いします」
よくわからない単語のまま、ドレッシングがのったスプーンを、和真の口元へ差し出す。
こぼれないように反対の手を添える様子から、ぎこちなくもわずかなドレッシングを啜った。
「お、美味しい…です」
「良かったです!和真さんの好きな味、覚えました」
「…はい…」
嬉しそうに笑うあおいから、少しだけ顔を逸らした和真。