義兄と結婚生活を始めます
「えっと…」
答えに詰まっているあおいの顔を覗き込みながら、微笑む和真は、ポンポンと優しく頭を撫でる。
テーブルにマグカップを置くと、改めて和真の方を向くあおい。
「あの、和真さんのお母さんってどんな人ですか?」
「……突然ですね」
「ご、ごめんなさい!…ちょっと気になって…」
「……」
ココアを飲んだ和真は、カップに口をつけたまま少し考える。
そして、自分も同じようにテーブルにカップを置いた。
「あおいさんのように、あたたかい人…というのは今でも覚えてますよ」
「あ…っ」
「あの父と結婚したのが、不思議なくらいです」
和真の言葉から察したあおいは、口を開きかけたが、話を続ける和真を見守った。
「六歳の頃だったので、もうぼんやりとですが、あおいさんみたいに表情豊かで…よく笑っていたと思います…僕も…」
「…っ…」
「僕が泣いていたときはよくココアを作ってくれていました……これじゃあ、あおいさんに重ねてしまっていたみたいですね…すみません」
黙って首を左右に振るあおいの目からは、涙がポロポロとあふれてきた。
母親と笑っていたであろう、幼い和真を想像すると、止まらなかった。
自分との生活の中で、重ねて見ていたことを認める和真が、なかなか表情を崩さない人生を歩んできた理由が、少し腑に落ちる。
あおいの涙を、そっと指で拭う和真。
「…あおいさん…」
「か、和真さんっ…ずっと…ずっとっ、寂しかった、んだなって…!だからっ…っ、表情…変わらな…っ」
和真は、手を伸ばして服を掴んできたあおいを抱きしめた。
嗚咽をもらしながら、和真の背中に自分の手を回すあおい。
「…ひっく…、も、さ…寂しくな、い…です…よ…っ」
「はい……ありがとうございます…」
ギュウッと力強く抱きしめる和真の目に、うっすらと涙が浮かぶ。
そして、そっと目を閉じた。
「あおいさんが笑ってくれるなら、寂しくありません」
「…っ…はい…」
あおいの耳元で小さく囁くと、二人はゆっくり離れる。
ポンポンと頭を撫でられ、顔を上げれば優しく笑う和真に、あおいは笑い返した。
まだ残る涙を袖で拭き取るあおいに、マグカップを渡し、背中を摩った。
「あ、ありがとうございます…」
「明日、ご家族にもう一度謝罪してからお話をしようと思います」
「謝るのはもういいと思うんですけど、何のお話ですか?」
「正式にあおいさんを妻に迎えたい、という話です」