義兄と結婚生活を始めます
「それでですね、あおいさんが学業で忙しくなる前に、どこかに出かけようと思うんですけど、どこがいいでしょうか?」
「和真が行きたいところに行けばいいんじゃないか?まぁ、でも…俺なら……10代・JK・デートってワードから考えたら、あっこ!水族館かな!」
さっそくスマホを取り出す和真は、サクサクと検索を始めた。
動作の速さを見て、ニヤニヤとし始める涼介。
「ありました。あ、リニューアルオープンしてますね」
「…珍しい…」
「何がですか?」
スマホから目を離して、涼介へ視線を移す和真。
ニヤつく涼介は何も答えない。
埒が明かないと判断した和真は、話を進めることにした。
「それよりも、あおいさんが楽しめるように、水族館の貸切りをした方がいいでしょうか?」
「逆に楽しめないっつーか、気遣いが重すぎるわ…」
「…そうですか…」
なるほど、と呟く和真は再度スマホに夢中になる。
涼介は飲み物を飲んでから立ち上がると、和真を立ち上がらせた。
「はいはい、もう戻るぞ。財布」
スマホを見ながら涼介に引っ張られる和真は、胸ポケットから財布を取り出して涼介に渡した。
そのまま和真の財布から支払いを済ませると、引き連れて店を出る。
「…あ、さっきはデートと言いましたが、違いますよ。出かけるだけです」
「いやいや!男女が2人で出かけるならデートだろ!」
「僕とあおいさんは表面上は夫婦ですが、本来は義妹ですよ。一人っ子だった僕からしたら、妹以外の何でもありません」
会社へ戻る道のりを並んで歩きながら、和真は見ていたスマホを閉じて、ズボンのポケットに入れた。
ニンマリ笑い続ける涼介が視界に映る。
「…さっきから何なんですか…その含んだような笑みは…」
「いやぁ…アノ和真が人のため、女の子のために動くなんて初めてだなって…」
「…そう…でしょうか…」
立ち止まる和真に気づくと、涼介は振り返って肩に腕を回しに行った。
「俺のアドバイス?も素直に聞いてくれたり、メシ奢ってくれたりしてさっ、俺は嬉しいよ~」
「…歩きにくいです」
無表情で歩を進める和真は、涼介と一緒に社に入る。
そのままオフィスフロアに向かうためのエレベーターを待っていると、背後から声をかけられる和真。
「小鳥遊さん!」
「……海崎さん…」
振り返った先には、走ってやってくるあおいの父親の姿があった。
丁度良くエレベーターが到着した音が鳴るが、察しの良い涼介は和真の肩をポンっと叩いて先にエレベーターへ乗る。
扉が閉まる頃には、あおいの父親は息を切らせて、和真の前で立ち止まった。