義兄と結婚生活を始めます
…―

ショップから出てきた二人は、満足感に浸りつつ、歩き始める。


「あ~!いいの買えたね~!!」

「持ってる靴にも合うし、ちーちゃんのおかげだよ。ありがとう」

「お礼はタスバのフラッペでいいよ」


ピースサインを見せる千尋に、紙袋を肩にかけているあおいは笑った。


「あはは、もちろんそのつもり。ついでにケーキもつけちゃう!」

「まじ!?あおい天使様~!」


喜びのあまり、抱き着いてくる千尋に、可愛さを感じるあおいはまんざらでもない。

二人は歩いてタスバに向かい、並んでいた列の後方へ並んだ。
並んでいる間の主な話題は、千尋が中心であおいは聞き手に徹する。

一通り話が終わる頃には、順番が来ていた。
各々が注文を終えると、あおいは財布を取り出して現金で支払う。

頼んだ品を持ってテーブルへつくと、千尋はさっそくケーキを頬張った。
あおいも自分が頼んだ飲み物に口をつける。

ケーキを食べていた千尋は、ふと会計時のことを思い返した。


「…そういえば、あおいってクレジットカードとか持ってたんだね」

「え!?」

「ほら、服買うときに出してたでしょ?すごいね~」


千尋の言葉に苦笑いをするあおいは、再度飲み物を飲む。


(何か話題を変えないと…!!)


「えっと、そうだ!ちーちゃんは高校からもらった宿題、もう終わった?」

「……もう少し…ちょっと難しいんだよねぇ…」


めんどくさそうな顔をして脱力する千尋。
しかし、少し考えた後にあおいを見た。


「…ねぇ、急に高校が変わったのは、本当に家の都合?」

「…うん。そう…」

「人の家のことだから、余計なことだとは思うんだけど…なんとか通わせてもらえないか、お父さんとかお母さんに頼んでみたら…?」


切実な顔の千尋と目が合うあおいは、心が痛んだ。
本当であれば、千尋と同じ制服を着て通うはずだったのだから…。

黙って俯いてしまったあおいに、千尋は慌てて謝った。


「ご、ごめん!あおいが一番つらいのに…!無神経だったね…」

「…ううん、そんなことないよ。ちーちゃんがそんな風に思ってくれてたの、嬉しい。…でも、ごめんね…」


あおいの気持ちへ配慮するように、千尋も黙ってしまったが、しばらくして呟いた。


「何かあったら、ちゃんと相談してね…約束よ!」

「うん…!」


千尋と友だちになれたことを、心から良かったと感じるあおい。
そして、二人は帰宅しようと席を立った。

駅の改札まで一緒に歩き、改札口で別れの挨拶をする。


「ちーちゃん、今日は本当にありがとう。また遊ぼうね!」

「もちろん!あ、明望学園の制服、写真送ってよ?またMINEするね~」


待ち合わせと同じ、笑顔であおいに手を振る千尋は、改札口へ入って行った。
自分も笑顔で手を振り、千尋を見送ったあおいは見えなくなるまで手を振り続ける。

完全に千尋の姿が見えなくなったのを確認して、手を下ろした。

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