義兄と結婚生活を始めます
あおいがリビングへ戻ってきた頃には、テーブルの上に食事が並んでいた。
肉じゃがやシューマイ、シーザーサラダや和え物など、数点のおかずにあおいは驚く。


「わぁ…!すごい!これ全部、和真さんが作ったんですか!?」

「はい」

「なんだか料亭に来たみたい…」


和真と向かい合わせに座ったあおいは、一緒に手を合わせる。


「いただだきます」


箸を持ってさっそく食べ進めると、目を輝かせたあおい。


「…んん!!美味しい!」

「そうですか」


特に大きな反応もない和真は、感想を伝えるあおいを見ようともしなかった。
和真の様子を気にしつつ、あおいは食事を続ける。


(…あれ…?何だか元気ない…?…あ!!)


心当たりがあったのか、あおいは持っていた茶碗と箸を置いた。


「あの…ごめんなさい…!!」

「はい?」


突然の謝罪に和真は箸を持つ手を止めると、顔を上げてあおいを見つめた。
状況が掴めない和真。


「いつも、その…私が作るご飯が物足りなかったですよね!?次からは気をつけます!だから、えっと…ごめんなさい!!」

「あおいさんのご飯はいつも美味しいです。特に問題はないですけど…」

「え?怒ってない…ですか?」


頭を下げていたあおいは、恐る恐る顔を上げると気恥ずかしそうな様子の和真が待っていた。
和真は前髪を触って顔の半分を隠しながら、赤い顔をする。


「怒っているのではなく……明日の土曜を考えると…落ち着かなくて、ですね…誤解させてしまいました…」


あおいから目線を逸らすように、赤くなる和真は顔を横に向けた。
呆気に取られていたあおいは、口を開く。


「じゃあ、落ち着かないから、とにかく作りたかったってことですか?」

「まぁ…そうですね。正しくは、緊張していると言いますか…」


コホン、と咳払いするように口元に手を当てて、自分が今感じていることを伝える和真。
あおいも口元を手で覆った。


「…ふ…ふふ、あははっ。それ、和真さんだけじゃないですよ」

「と、言いますと?」

「私も同じです」


はにかむあおいに見入る和真は、口角を上げて笑みを見せた。


「緊張はしていますが、明日は楽しみでもありますね」

「はい!」


優しく笑う和真と、笑顔で返事をするあおいの間に、再び穏やかな空気が戻ってくる。
二人は食事を終わらせた後も緊張は続き、就寝の時間が近づくほどお互いの顔が見られなくなっていた…。

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