義兄と結婚生活を始めます
「美味しい…!」
サクサクなクロワッサンに驚くあおい。
和真も自分のロールパンを食べると、コーヒーを飲んだ。
あおいの方へ、チラリと視線を向けると、美味しそうにメロンパンを頬張っている。
自分のポケットへ手を入れて、入っているメモ用紙に視線を落とした。
すぐに手を出すと、ハンドルを握る。
「…出発します」
「ふぁ、ふぁい…!」
最後の一口だったようで、メロンパンを食べ終えたあおい。
できる限り大きな揺れや急ブレーキの衝撃がないよう、和真は運転に気をつけた。
全てのパンを食べ終えたあおいは、満腹になったお腹をさする。
「ごちそうさまです。朝からパン屋さんのパン食べるなんて、すごく贅沢でした」
「そうですか」
オレンジジュースを飲んだあおいは、素っ気なさが戻った和真に小さな違和感を覚えた。
走り続けた車の窓からは、次第に青色の景色が見えてくる。
あおいは、窓に頭をくっつくけるほど、見えてきた海に気持ちがワクワクしてきた。
「もうすぐつきます」
近づいてくる大きな建物の横にある、同じように大きな駐車場へ車は入って行く。
入り口で車を停めた和真。
すると、係員がやって来ると、和真はスマホを開いて画面を見せた。
「あっ、小鳥遊様ですね!こちらのスペースを確保しております。どうぞ!」
和真は、係員が誘導する方へ車を発進する。
一部始終を見ていたあおいは、しばらく開いた口が塞がらなかった。
(本当に小鳥遊家ってすごいんだ…)
建物の出入り口近くに車が停車して、二人は降りる。
「わぁ…っ、海の匂い…」
「車が熱くならないように、テントやパラソルをお願いします。手配はしているので、届いたら立てておいてください」
「は、はぁ…、わかりました…」
残った係員へ話し終えると、風にスカートをなびかせるあおいの後ろ姿に、視線を向ける和真。
あおいの隣に立つと声をかけた。
「行きましょうか」
「はい!」
進みだす和真の後ろから、あおいはまた小走りでついて行く。
ゲートで二枚のチケットを見せて、中に進んだ。
インフォメーションセンターに置かれているパンフレットを取ると、あおいへ渡す。
和真から受け取ったパンフレットをさっそく開いて、水族館内に何があるのか確認をした。
「えっと……うーん…」
カシャカシャカシャカシャ
隣から聞こえてくる音に、顔を横に向けたあおい。
和真がスマホを持って、館内を撮っていた。
「………和真さん…?」
「…何でもありません」
「そう…ですか…」
そそくさとスマホをポケットに入れる和真。
二人の間に、何とも言えない空気が流れた。