義兄と結婚生活を始めます
再度、パンフレットを見るあおいだが、チラリと和真へ視線を向ける。
いつもよりは、当たりをキョロキョロしており、どことなく興味津々な表情をしていることをあおいは感じ取った。
「…ワクワクしますね」
「え…」
話しかけるあおいは、まるで和真の気持ちを代弁しているようだ。
「あの、11時からイルカショーがあるので、良かったら見ませんか?」
「わかりました」
「ありがとうございます。それじゃあ、こっちから周りましょう」
あおいは、向かいたい通路の方へ指をさした。
薄暗くなった通路を歩いていく二人。
隣に並ばず、先を歩く和真の後ろをあおいがついて歩く。
大きな水槽を見る和真は、泳ぐ魚たちに目をキラキラさせていた。
あおいが見やすいようになのか、いつもよりもゆっくり歩いてくれる和真。
サメやウミガメが泳ぐ姿に、あおいは思わず声が出る。
「なんだかリラックスしてるみたい」
カシャカシャ
また写真を撮る音が聞こえたため、和真へ視線を向けた。
あおいの視線で、ハッと我に返って動きが止まる和真。
手で口を押えるあおいに、和真は首を傾げた。
「すみません。いきなり撮りだすのは失礼でしたね。水族館は初めて来たので…綺麗な水槽に思わず…」
「……っ、っはは、あはははっ!和真さ…っ、可愛…っ」
我慢できずに吹き出したあおいは、声を上げて笑う。
キョトンとした顔になった和真は、笑われている理由がわからなかった。
「だって…ふふふ、さっきから撮ってる音してるのにっ…あははっ、隠すから…!」
「…大人の行動ではないと…呆れるところでは…?」
「え?どうしてですか?みんな写真撮ってるのに…」
浮かんでいた涙を拭いていたあおいは、不思議そうな顔になる。
少し俯き気味になった和真が黙ってしまった。
(……あ、そっか)
あおいは自分のスマホを撮りだして、ウミガメを撮る。
そして、撮った後の画面を和真に見せて、画面を指さした。
「和真さんと水族館に来れて嬉しいです!楽しいです!いっぱい写真を撮りましょう!」
にこっと笑うあおいの表情に、和真は持っていたスマホであおいを撮った。
「…すみません。あおいさんが良い表情をされていたので…」
「…」
「あ、間違えました。可愛い、という言葉が正解ですね」
和真が柔らかな笑みを見せると、あおいは真っ赤になる。
撮った写真を見返す和真は、満足そうにニコニコし始めた。