義兄と結婚生活を始めます

「す、すみません…!!」


ぶつかった相手に、すぐに頭を下げて謝罪した後、改めて和真に振り返った。


「…ごめんなさい…」

「前を見る前に…こうしていたら安心ですね」


苦笑いしていたあおいの手を取り、そのまま繋いだ。
一瞬、固まってしまったが、ようやく状況を理解したあおいは、慌てて手を離そうとした。


「いいぃやぁ…あ、あ、あの…!!これは…!」

「あおいさん、小さいので見失いそうですし…さっきのようにぶつかっってしまうと危ないです」

「で、でも…!!」


耳まで真っ赤にするあおいは、手を離す理由を何とか見つけようと必死に頭を回転させる。
しかし、あおいの考えを見透かしているのかはわからないが、和真はニッと笑った。


「僕が離したくないのですが…ダメですか?」

「~~っ…ダメ…じゃない、です…」


和真の押し…というよりも、確実に離せない理由を提示されたことで、観念したあおい。
あおいの返事に満足したのか、和真は満足そうに笑った。

また新しい和真の一面を見られたこと、手を繋いで並んで歩く緊張感から、あおいの心音は落ち着いてくれない。


「あ、向こうの方でペンギンが泳いでます。見ていいですか?」

「は、はいっ!!」


歩き出す和真の手に引かれ進み、猛スピードで自由に泳ぎ回るペンギンの水槽の前に来た。
さきほど同じように、目を輝かせて泳いでいるペンギンを眺める和真。

「泳ぎ方も綺麗ですよね…」

(私はそれどころじゃないです…!!)


恍惚な表情で見惚れている和真に、あおいは手が汗ばむのを何とか抑えようと必死だった。
加えて、心音が激しく鳴っていることを体中から感じていたため、ペンギンに集中できない。

ただ、和真にとっては意味のことだと思われているのか、単に子ども扱いをされているのか…行動の理由がわからずにモヤモヤとするあおい。


(……あれ?…なんでモヤモヤ…?)


自分が感じた感情に戸惑いつつも、楽しそうな和真の表情を見て、一旦その感情は置いて置くことを決めた。







…―

二人が水族館を出たのは、夕方前だった。
車の方へ向かうと、見えてきたのは数人のスタッフがパラソルを抱えている光景。


(ほ、本当にパラソルが届いてたんだ…)


若干の驚きを感じるあおいを連れて、和真は車のロックを解除した。


「あぁ!小鳥遊様!」

「ありがとうございました。さ、あおいさん。どうぞ」

「ありがとうございます…」


助手席側へエスコートすると、ドアを開ける。
助手席に乗り込んだあおいの手を、和真はギュッと握った。


「和真さん…?」

「…なんだか、名残惜しくて…」


ポツリと呟く和真の言葉に、一気に真っ赤になるあおい。
和真は、フーっと息を吐いて再度ギュッと握った後に、あおいから手を離してドアを閉めた。

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