義兄と結婚生活を始めます
真っ赤な顔のままなあおいは、和真から握られていた手の温もりを感じるように、自分の手を重ねていた。
和真が車に乗り込んでくると、パッと手を離す。
出かけた際とは違う緊張を感じてあおいは、和真へ質問をした。
「あの…もう帰りますか?」
「いえ、近くにディナーもしているカフェがあるので、そこで夕食を取ろうと思っています。…あ、疲れましたよね?帰りますか?」
「大丈夫です!お腹も空いてきたので…行きたいです」
車のエンジンがかかると、さっそく発進して公道へ出て行く。
本当に近くにあったようで、5分ほど走るとカフェの駐車場へ入った。
レトロ調の外観で、明るすぎない照明はどこか落ち着いた雰囲気を感じさせる。
あおいと和真は、車を降りてカフェの店内に入店した。
「いらっしゃいませ。二名様ですか?」
「はい。予約をしていた小鳥遊です」
「小鳥遊様……はい!お席にご案内します!」
予約表を確認した店員は、急にピシッと背筋を伸ばし、あおいと和真を席へ案内した。
(予約…お、大人…!!)
案内された席に座り、二人分のメニュー表を渡される。
「ここのカフェは、コーヒーだけじゃなくて、食材にもこだわっているので、どれも美味しいですよ」
和真がメニュー表を開いた後に、あおいも同じようにメニュー表を開いた。
どれも美味しそうな写真が多く、迷ってしまう。
「好きな物を頼んでくださいね」
「はい…うーん…うぅん…」
メニュー表越しから聞こえてくるあおいの悩む声に、和真は心から和んでいた。
「よし、決めました!これにします」
「…わかりました」
あおいが指をさしたメニューを見ると、和真は店員に向かって手を挙げる。
注文が終わると、途端に少しの緊張を感じ始めたあおい。
「えっと…今日は、本当に楽しかったです。連れてきてくれて、ありがとうございました」
「いえ、誘ったのは僕ですから。僕も…楽しかった、です…」
「…なんだか、いろんな和真さんを知られて、すごく得した気分です。今みたいに、気持ちを教えてくれること、最初はなかったので…」
嬉しそうに話すあおいの言葉で、自分の一日の行動を思い返し、気恥ずかしさを感じた和真。
少し頬を赤くする。
「その…たぶん、僕の方があおいさんよりはしゃいでいたからだと思います…お恥ずかしい…」
(可愛い……!)
「でも、本物のペンギンをあんなに近くで見たことには、感動しました…」
目を閉じてペンギンを思い出すと、口元が緩む和真。
その和真の様子に、クスっと笑っていると、あおいたちの元へ料理が運ばれてきた。
「盛りつけもすごく綺麗ですね」
「本当ですね。いただきましょう」
「はい!」
二人は手を合わせて挨拶をすると、食事を楽しんだ。