義兄と結婚生活を始めます
12話
名前を呼ばれる由梨子は、和真であることを確信して、一気に表情が明るくなった。
「やっぱり和真!?うそ!すごい偶然!」
「…いつ、日本に?」
「一昨日。あっ、涼介くんは元気?それから…も〜!話したいこといっぱい!ねぇ和真、私ちょうど時間があるから一緒、に………」
由梨子は、嬉しそうに和真の腕を掴んだが、向かいに座るあおいに気づくと、動きが止まる。
じっと見つめてくる由梨子に、あおいは戸惑った。
一言で言うなら、美人を代表するような容姿の由梨子。
肩下まである栗色の髪は軽いウェーブがかかり、キリッとした目元と口元のほくろが色気を感じさせる。
和真と並ぶと、まさに美男美女。
横に立つことが当たり前のような、存在感のある美人だ。
しばらくあおいを見つめた由梨子は、ニコッと笑った。
すると、和真へ顔を寄せると、あおいに聞こえるように耳打ちをする由梨子。
「ちょっと和真、仕事関係者の子?遅くまで接待するなんて…また叔父様にいいように使われてるの?」
「違います」
「冗談!涼介くんの妹?…っていたっけ?」
クスクスと笑う由梨子に、和真は呆れたようにため息をついた。
そのとき、和真の雰囲気が砕けているように感じるあおい。
…モヤ………
「たった半年離れていただけで、そこまで忘れますか?」
「だから冗談だってば〜。ふふ。和真ったら、ちゃ〜んとわかってるくせに〜」
親そうに話す2人の様子に、膝に置いていた手を、あおいはキュッと握った。
同時に、ピクリと動く唇は固く結ばれる。
「ね!本当、早く移動しよう和真!この子送ってたくさん話しましょっ」
「断ります。由梨子が帰ってきたなら、何かしらの理由をつけて食事会があるでしょう」
「も〜!それは特別がない!…ね、お願い?」
駄々をこねるように、立ち上がった和真の腕を掴んで引き留めようとする由梨子。
小首を傾げて上目遣いで和真を見上げた。
再度、ため息をついた和真は、由梨子の言葉を無視してコートを手に取る。
「由梨子。あおいさんが見ているので、やめてください」
「…あ…ごめんなさいねっ!恥ずかしい…ところで、結局この子はどこの子なの?」
「紹介が遅れました、僕の妻のあおいさんです」
あおいへ視線を促すよう手を伸ばした和真。
急な紹介に驚くあおいは、反射的に背筋がピシッと伸びる。
あおいは、内心ドギマギしながらも、由梨子へ会釈をして視線を向けた。
「あの」
「は……?」
挨拶と自己紹介をしようとした矢先、由梨子の漏れ出た疑問の声に、あおいの言葉は遮られる。