義兄と結婚生活を始めます
改めて、あおいのことをマジマジと見つめる由梨子は、上から下まであおいを見る。
すると、プッと吹き出して、口元に手を押さえた。
「ちょっと、和真ったら!会わない間に冗談言えるようになったの?…で、あなた何?」
ふふっと笑いながら、目を伏せてまま由梨子は耳に髪の毛をかける。
あおいは、自分に対して問われたことに答えられずにいた。
なぜなら、目を開けた由梨子の眼差しに、体が強張ったからだ。
「和真ね、冗談を言えるような性格じゃないの。あなたが何かしているの?和真を脅しているなら…私が許さないわよ…?」
「…っ…、わ…私…」
ジロリと睨みつけてくる由梨子の目は、完全に敵意のある目だった。
尻込みするあおいだが、意を決して答える。
「私は…!」
「由梨子!!…失礼です」
突然、大きな声を挙げる和真に遮られてしまった。
和真の背中しか見えないが、聞こえた声音から怒っているようにも感じる。
軽く咳払いをした和真は、あおいへ振り返ると微笑んだ。
「あおいさん、帰りましょう」
「は、はい…!」
席に座っていたあおいは、慌てて立ち上がると由梨子へ会釈をして、和真を追いかける。
「ちょっ、ちょっと和真!!待っ」
ヴーヴー!ヴーヴー!
2人を追いかけようとした由梨子のバッグから、着信を上げるバイブ音が鳴った。
すぐにスマホを取り出すと、表示画面を見てから渋々と着信に出る。
横目では、ちょうど会計を終えて出ていく和真たちを追っていた。
車内に乗り込んだ後、すぐに車を発進させた和真。
道路沿いは、同じようにライトを照らして走る車が多くなっている。
行き道とは違う沈黙に包まれる車内で、あおいはずっと変な気持ちを抱えていた。
(…結局…由梨子…さんは、どういう関係なんだろう…)
俯いていたあおいは、チラリと和真へ視線を向ける。
ただ、顔は見れなかったので、ハンドルを握る手をじっと見てしまった。
(綺麗な人だったし…結構、親そうだったし……)
…モヤ…モヤ…
徐々に、眉間にシワが寄っていたあおい。
和真たちの様子を見ていたときにも感じた感情が、自分の中を覆っていく。
脳裏には、和真の腕に触る由梨子の手が過った。
(……和真さんの…元カノさん…とか…?)
さらに、和真を見つけた際の嬉しそうな由梨子の表情が思い返された。