義兄と結婚生活を始めます
そのまま、あおいの隣に立つ和真が、自分に視線を向けていることに気づく。
ぎこちなくも、顔を向けるあおい。
「…えっと……?」
「ひとつ、気になることがあるのですが、聞いてもいいですか?」
「は、はい…!」
丁寧に断りを入れてくれる和真へ、あおいの気持ちは身構えた。
「車の中で、びっくりしたと言っていましたが、あれはどういう意味なのかと…考えてもよくわからなかったので、教えてください」
「え!?……あ…えぇ〜…と」
予想していなかった質問だっただけに、あおいは視線と一緒に顔まで逸れていく。
あおいの動きに合わせて、じっと見つめる和真も動いた。
しばらく、言葉に詰まっている様子のあおいを見ると、和真は思い当たる節があったのか、口元に手を当てる。
「やっぱり由梨子のことですよね。由梨子が知らないとは言え、もっと早くにあおいさんを連れて出るべきでしたね。すみません…」
「違っ…う…こともない…?かもですけど…っ、その……お、怒りませんか…?」
「あおいさんに怒ることはありません。あおいさんの考えていることを知りたいです」
コクリと頷く和真は、真剣な表情であおいを見つめた。
あおいは、いまだに迷う表情を見せては、そのまま俯いてしまう。
「…あおいさん…?どうし………」
和真は片膝をついて、あおいの顔を覗き込んだが、言葉を失った。
長い黒髪で隠れていた顔は真っ赤になり、目には涙をに浮かべていたからだ。
「…その…っ、和真さんと由梨子さんが…こ、恋人…だったのかなって思ってて……従姉妹だって知って………びっくり、しました…」
「……ふっ…」
「え!?」
吹き出してしまった口を抑える和真。
驚きとショックを覚えたあおいは、立ち上がった和真を見上げた。
勇気を振り絞って話した自分の気持ちだっただけに、恥ずかしさでいっぱいになっていく。
「なん、え!?な、なんで笑うんですか…!」
「す…みません…。あおいさんがとても可愛らしくて…ふふふ」
「…〜…っ…!」
優しい笑みを向ける和真は、手を伸ばしてあおいの目元に残る涙を拭った。
「すみません…こんなに楽しい日は初めてで…どうやら、まだ浮かれているみたいです」
拭っていた手はあおいから離れていく。
謝っているはずの相手は、自分だけに微笑みを向けることに、大人の余裕とズルさを感じたあおい。