義兄と結婚生活を始めます
「あ…えと…ち、誓います!」
慌てて訂正の言葉を言うものの、後ろから感じる視線に、あおいは泣きそうになる。
司祭者は咳払いをすると、進行を再開してくれた。
言い間違えがないように、集中して答えるあおい。
ようやく、最後の「誓い」の返事をして、小さくホッとした。
たった5つの返事に、とてつもなく長い時間を感じたからだ。
「それでは、誓いの口付けを」
この言葉に、あおいの心臓はドッと跳ねた。
顔が熱くなる感覚も感じて、チラリと和真へ視線を向ける。
あおいへ体を向けて、まっすぐに見つめた。
そのまま両肩を掴み、あおいを引き寄せる和真。
「…っ…」
「そのまま、じっとして」
耳元で囁く言葉と共に、あおいの耳を和真の息が撫でる。
ウェディングベールを上げられても、恥ずかしさからあおいは顔を上げられなかった。
グイッ
強引とも言えるが、俯くあおいの顎を上げる。
(あ…っ)
和真と目が合うと、彼の黒い瞳に映る自分が見えた。
ゆっくりと近づいてくる和真の顔に、あおいはギュッと目を閉じるしかない。
「…これ以上はお見せできません」
目を開けたあおいだけではなく、式場にいた全員がポカンとした。
そんな雰囲気を感じ取っていないのか、和真はあおいから離れる。
「失礼、先に戻ります」
ペコリと会釈をした後、何食わぬ顔であおいが入場してきた扉からそのまま出て行った。
別の意味で静まり返ったままの式場は、しばらく誰も動けずにいたのだ。
…ー