義兄と結婚生活を始めます
2話
あれから、披露宴は中止となり、あおいたち家族と小鳥遊家の和真と社長が、親族控室で話し合いを行っていた。
「全く…通常は新婦と一緒に退場だろうに…」
「特に何も言われなかったのでいいでしょう、社長」
呆れる父親の文句に、素っ気なく答える和真。
しかし、海崎家のあおいたちは、気まずい表情を見せる。
しかし、あおいの父親が切り出した。
「しゃ、社長…!本日は誠に申し訳ございません!!すみれを見つけるまでお時間をいただきたく…!!無理でしたらば、ここで破談ということも…どうかご検討ください…」
「ふぅん……」
膝の上で拳を握るあおいの父親。
あおいは、その拳が震えていることに気づいた。
小鳥遊社長は、口元に手を当てると、考え込むような仕草を見せる。
じっと待っていたあおいは、我慢できずに口を開いた。
「あ、あの…子どもの私が言うのは生意気だと思います…けど、おねぇ…姉は理由もなくこんなことしません!きっと何か事情があったんだと思います」
「あおい!!子どもがを口を出すんじゃない!!」
怒鳴る父親に、ビクリと肩が跳ねる。
小さく謝るあおいは、そのまま俯いた。
小鳥遊社長は、チラッとあおいを見ると、パンッと膝を軽く叩く。
「そうだな、本人の口から聞かなければわからん…となると、妹さんに代役を続けてもらいたい…と思うんだが?」
「ええ!?」
にっこり笑う小鳥遊社長。
あおいは思わず声を上げてしまった。
慌てだすあおいの両親は、すぐに断りを入れる。
「お、お言葉ですが…あおいは4月から高校に入学します…代役はさすがに…、親としては…」
「その入学予定の高校、小鳥遊家の品位を下げかねない…名望学園へ入学してもらいたい」
「名望…学園…ってあの…!?」
あおいも一緒に驚いてしまう。
なぜなら、将来的に有望となり得る人材を育成する名望学園は、有名だからだ。
名望学園は、政界・財閥などの有名かつお金持ちや由緒ある家柄の生徒が通う高校。
ただし、作法・学問・業界の知識などが必須科目となる。
驚いたままの海崎家へ、小鳥遊社長はさらに続けた。
「こちらが言い出しているのだから、費用は全て小鳥遊家が出す…ただし…」
「ただし…?」
あおいたちは社長へ視線を向けて、次の言葉を待った。
「夫婦として振る舞い、一緒に生活してもらいたい」
(……!?)