義兄と結婚生活を始めます
「そういえば、ちーは元気?」
「ちーちゃん?うん!元気だよ~春休みも一緒に買い物して遊んだんだ~」
「なんだよ…誘えよ…」
「えぇえ…祐希くんが明望にいるなんて知らなかったし…それに…私もいろいろと不安があったから…、余裕もなくて…」
どんどん小さな声になっていくあおいは、自然と顔が下へ向いていく。
あおいの様子を見て、ポンッと頭に手を置く祐希はまたもやニカッと笑った。
「今度、ちーも誘って一緒に遊ぼう!約束!」
「…うん!…って、県議員の息子さんは忙しいんじゃ…」
「普通にひま。上位の成績キープしてれば何も言われないし…あ。そうだMINE交換…とかって、しても大丈夫なやつ…?」
「え?うん、交換しよう。ちーちゃんとのグループも作ろうか。ちーちゃんもきっとびっくりするよ」
二人でスマホを取り出して連絡先を交換する。
祐希のアイコンを見て、友達がどんどん増えていく感覚に、嬉しさでフフッと笑った。
玄関口について校門を見ると、見慣れた車が停車しているのが見えた。
楽しかった時間から一気に現実に引き戻されると、あおいは慌てて祐希に別れを告げる。
「あれたぶん、三森さんの車だ!ずっと待たせてたかも…!祐希くんごめんね!また明日」
「おう。明日な!」
手を挙げて走っていくあおいの背中を見続けると、持っていたスマホの画面を見てグッとこぶしを握った。
思わず緩む口元は、あおいのアイコンを見て、とうとうにんまりと嬉しいという表情になる。
「やった…!」
…—
カタカタとキーボードを叩く音の中に、会話や電話の鳴る音が交差する和真の周囲。
自身もパソコンの画面を見つめていると、隣にいる由梨子が話しかけてきた。
「和真、ここのデータの数値って、古くないかしら?直近の数値の方が説得力があると思うわ」
「それは先方の希望で、過去の数値とどの程度大幅な違いがあるかを見ておきたいそうです。だから、そのままにしていてください。更新するとしたら、概要欄の説明文ですね」
「わかったわ。それと、今日の分のタスクは完了したから、明日の分のタスクを確認しておいてほしいの」
由梨子が書類の束を差し出すと、和真のデスクの電話が鳴った。
「小鳥遊さん、外線3番で三森さんからお電話です」
「由梨子、今日は異動初日ですから、もう上がってください」
「ちょ」
和真は由梨子の返事を待たず、すぐに受話器を取った。
ふてくされた顔を見せる由梨子は、荷物をまとめて鞄をデスクに置いて待つ。
「……そうですか、はい。20分後にロータリーへお願いします」
電話を切ると、和真は由梨子から受け取った書類に目を通した。