真白に包まれて眠りたい
54.透明な夜の香りに出会って

 千早茜著『透明な夜の香り』。図書館で何気なく手に取った本が、この先ずっと一緒に過ごす本になった。あらすじは読まずに借りた。タイトルから内容は想像できず、冒頭数ページの掴みも面白いものではなかった。
 図書館で借りたからには返さなければいけない。義務感で読み始めた。物語は、つまらなく感じた。途中を読み飛ばし、昼寝を挟み、比較的短時間で読み終えた。感想は、面白いとか泣けるとか、そんなものは一切なし。思ったところなんてなかった。読み終えられてよかった、本を返しに行こう、そんなことを考えていた。
 だけど、そのお話は、いつまで経っても頭から離れなかった。何が面白かったわけでもない。切なかったわけでもない。なぜか朔が頭から離れない。また、あのお話の世界に戻りたくなる。また読みたい。いや、また触れたい。
 数日後、文庫本を購入した。そして早速読み始めた。今度はじっくりと。
 お金を節約するために図書館に行ったのに、結局購入することになった。それほどの本だった。
 また読みたいとか、そういうのとは少し違った。ただ持っていたい。そばに置いておきたい。それだけだった。
 そんな本に出会ったのは初めてだった。
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