イケメン御曹司は恋に不慣れ

悩ましい彼女


ひまりが男たちに囲まれているのを見て俺は焦った。
そうだ、あいつは初めて見かけた時も男に声をかけられていた。
きっぱりと断ればすぐに終わるものを、動揺しているのかしどろもどろに答えていた。
そんな様子に苛立った俺は彼女を客から引き離すことにした。
もし、あそこで彼女がイエスなんて言っていたらと思うとゾッとした。

そんなことを考えているとドアがノックされ祐二が顔を出した。

「よう、ひまりちゃんとの話は終わったか」
「終わったのわかってて来たんだろう」
「いや…ひまりちゃんを正社員にしてくれてよかったよ。っていうか、お前ひまりちゃんのこと好きだろう?」
「はあ!? お前、なに言ってるんだ!」
祐二に言われたことに焦り、とっさに立ち上がり大きな声を出してしまった。

「ほら、ムキになる。お前さ、どれだけひまりちゃんのこと見てるか知ってるか?」
「そんなわけあるかよ。俺は店の様子を見てるんだぞ」
「はいはい、そうですね。でも、今日の客にひまりちゃんが絡まれてるの見て焦ってたろ?」
「別に焦るわけないだろう」
「そうか。じゃ、いいんだけど。彼女は芹菜と帰ったよ。ということで、俺も帰るわ。今日はお疲れ」
「あぁ、お疲れ」

俺は執務室で一人になると今日の事を思い返していた。今まで味わったこともない感情に悩まされる自分に苦しんだ。
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