イケメン御曹司は恋に不慣れ
「待ち合わせって、それって男じゃないでしょ。だったら、その友達が来たらその子も一緒にどう? 俺のダチにも声かけるし」
男じゃないって、決めつけられてなんとなくムッとした気持ちが湧いて、フィっと横を向いて言い返した。
「一緒には行きません」
その男は私の拒絶に一瞬固まったものの、再びニヤニヤして体を寄せてくる。
私がこの場を離れるために体の向きを変えると、懲りずに私の前に回り込んで来て勝手に話し続けられた。
「そんなこと言わないでさ。じゃあ、その友達が来るまででいいから、このまま話をしていようよ」
「あの…初めて会った人とお話することもないので遠慮します」
この人から離れたくて再度お断りの言葉を口にして、体の向きを変え歩き出そうと一歩踏み出すと、横から手首を掴まれて恐怖を感じた。
「な、何を…」
「行こうよ。いいだろ」
掴まれた手は振っても放してもらえず、腕を振るほどさらに強い力で握られ手首が痛くなる。しだいに距離を詰められ、その男の顔が近づいてくる。