愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!

34.すれ違い

 しかし、幸せな日々も束の間、俺たちは仕事が一気に忙しくなった。
 忙しい――というのはつまり、火事が増加していることを示している。


(くそっ、またか!)


 毎日、王都のどこかで火災が起きる。人口を考えれば当然ではあるが、最近は明らかに件数が多い。しかも、住人たちに火事の原因がハッキリとわからないというからたちが悪かった。


「いつのまにか家が燃えていたんです。本当です! 火なんて使っていないのに……」


 事情聴取をしながら、俺とプレヤさんは顔を見合わせる。

 以前、俺とクラルテが居合わせた商会の火災――あのとき、クラルテはなにもないところから炎が新たに出現したのを目撃している。消火の際にもあれが自然由来の炎でないことは確認した。


「魔術師による連続放火……か」


 もはやそう断定せざるを得ない状況だ。俺たちは大きくため息をつく。


< 219 / 266 >

この作品をシェア

pagetop