愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!

38.クラルテの謀②

「実際のところ、火災の被害者で事前に保険に加入していた方はどのぐらいいらっしゃるのでしょう?」

「それが、火災にあわれた方ほど、保険に加入をしていらっしゃらないのですよ。勿体ないですよね……ほんの少し保険料を払ってさえいれば、大きな補償が受けられたのに」


 ザマスコッチ子爵は大げさに手を広げ、ため息をついて見せました。


「……白々しい。保険に加入をしていないご家庭を選んで火をつけて回ったくせに」

「…………え?」


 おっと、本音が漏れてしまいました。まあ、敢えて聞かせているんですけどね! このままじゃ話が進みませんし、じわじわと攻めさせていただきましょう。


「なるほど、わかりました……。ハルト様との大切な愛の巣を守るためですものね。子爵のおっしゃるとおり、お金にはかえられないかもしれません」

「そうでしょう? 他のお客様も最初は保険料に驚かれるのですが、最終的にはそう言って納得をしてくださるのですよ」


 わたくしのことを見つめながら、ザマスコッチ子爵は微笑みます。


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