愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「うぁああ!」


 ああ、痛そう! 悶絶していらっしゃいます。こちらに飛んでくる際、ご自分で作り出した炎をくぐっていらっしゃいますからね。とってもとっても痛そうです。……が、自業自得でしょうか? 被害にあった人たちはもっと辛い思いをしているんですから。


「クラルテ!」


 あっ、ハルト様の声! ……と、振り返ったときにはすでに強く抱きしめられていました。
 温かい。ものすごく安心します。次第に目頭が熱くなってきて、胸がドキドキしてきて。わたくし本当は怖かったんだなぁって。自分の本当の気持ちに気づいてしまいました。


「……無茶ばかりして」


 ハルト様がささやきます。
 彼のおっしゃるとおりです。今回わたくし、結構無茶をしてました。ザマスコッチ子爵と二人きりで会うなんて嫌だったし、怖かったし、ハルト様に嫌われたら嫌だなって、ずっとずっと不安でしたから。


「……幻滅しちゃいました?」

「いや。惚れ直した」


 ああ、ダメです。そんなこと言われたら涙腺が崩壊しちゃうじゃないですか。
 えぐえぐ泣いてるわたくしをハルト様が抱きしめ、優しく甘やかしてくださるのでした。
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