愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!

39.手紙の真相

 倉庫に放たれた炎はスタンバイしていた魔術師団の面々にあっという間に消し止められました。ザマスコッチ子爵は元々魔法の才能なんてないお人――普段放火のときには、幼くてまだ分別のつかない魔法使いを実行犯にしていたのがその理由です。

 それでも、彼が負った火傷はなかなかのものらしく、倉庫から運び出された今もウンウン痛そうに唸っています。救護魔法を使えばいくらか痛みは和らぐのですか、誰も助けようとはいたしません。まあ、捜査当局に引き渡されたあとに治療を受けられるでしょうし、わたしは知ったこっちゃありません。


「お疲れ様、クラルテ」


 ハルト様と一緒に倉庫の外に出ると、プレヤさんから声をかけられました。
 彼です。彼こそが今回の謀の首謀者です。


「プレヤさん! 上手くいった、といって大丈夫でしょうか?」

「もちろん、上出来だよ。本当に無事で良かった……と! ハルト、危ない! 危ないから!」

「それで? 一体、なにがどうして、こういうことになったんですか? さっきから『あとで説明する』の一点張りで、俺は気が狂いそうだったんですよ!?」


 ハルト様がプレヤさんに詰め寄ります。予想はしておりましたけど、この間事情をまったく説明してもらえてなかったみたいです。気の毒なハルト様……思わず彼の頭を撫でてしまいます。


< 251 / 266 >

この作品をシェア

pagetop