【お手紙お返事ぺーパー】8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました。小話
「それと、……あの、あのね? ここなら、リーフェのお母様の遺物がなにか残っているんじゃないかと思ったの。私たち、この間の騒動で、グロリア様の骨から彼女の気持ちを聞くことができたわ。同じように、私とオリバーが一緒に力を籠めれば、リーフェのお母様の思念を見ることができるんじゃないかって」
『母さんの声が聞きたいの?』
「リーフェに、聞かせてあげたいって思ったの。だって、リーフェは私の大事なお友達だもん。ねっ、オリバー!」
「うん。そうだね」

 いつの間にか、オリバーがアイラの隣に来て手を握っている。まるで、アイラを励ますように。リーフェはふたりのそんな姿を見ていると胸がポカポカしてくる。

『アイラ。気持ちはうれしいけど。私、大丈夫だよ。だって今、全然寂しくないんだもん』
「え?」

 リーフェは大樹の根元に置かれた花冠に目を向ける。母親もふわふわとした白い毛並みを持っていた。やわらかくて温かい記憶。守られて、怖いものなどないと思っていた遠い日。あの日が返ることはない。でも、今のリーフェは、別の温かさを持っている。
 自分を心配する子供たち。大好きだと言って触れてくる手。リーフェはもうひとりじゃないのだ。

『母さんとはもう会えない。でもちゃんとお別れしているから平気。それにここ、父さんも眠っているらしいから、母さんも寂しくないと思うし』
「父さん? そう言えば、リーフェのお父様の話って初めて聞くわ!」 
『聖獣じゃなくて、普通の狼だったんだって。だから、私が生まれる前に死んじゃった。寿命差があるから、仕方ないんだよって母さんは言ってた』
「そうなんだ」

 オリバーが静かにリーフェの背中を撫でだした。アイラもぴっとり引っ付いてくる。

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