【お手紙お返事ぺーパー】8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました。小話
 やがて、幹の太い樹齢が長そうな木の下へとやって来た。

『ただいま、母さん』
「ここは?」
『昔、私と母さんが住んでいたところ。母さんはこの木陰がお気に入りだったの。ここに力を込めるとね、守りの結界が強くなるんだよ』
『だから定期的にここを訪れていたのか』
『うん』

 リーフェが目をつぶり、幹に額を当てて力を込めた。
 大樹はリーフェから力を吸い取り、大樹の葉がうっすら発光する。──と、いつもよりも早く、力が押し返され始めた。
 疑問を感じて目を開けると、隣でドルフが同じように力を送っていた。

『なんで?』
『せっかくここまで来たんだ。この大樹を満たすほどに力を送れば、お前には少しつらいだろう』

 たしかにそうだ。だからリーフェはここに来るとひと晩休んでから帰る。

『そっか。ありがと』
「ねぇねぇ、リーフェ、ここにこの花冠飾ってもいい?」

 アイラはかばんから、白いふわふわの花で作られた冠を取り出した。昼間、リーフェが昼寝をしている脇で作っていたものだ。

『この花、リーフェに似てるね』って言われたので、『この花好きかも』と答えた覚えがある。

「リーフェ好きだって言ったでしょう? だからリーフェのお母様にも見せたかったの」

 リーフェはきょとんとしていた。目をくりくりと丸くして、アイラをじっと見ている。

『……母さんに、お花?』
「うん。そうだよ。ほら、お墓とかに飾るでしょう? せっかくリーフェのお母様に会いに来たんだもん!」
『そっか』

 ちょっと不思議な気分だ。リーフェは自分以外に、母親に会いたいという人が現れるなんて思ってもみなかった。
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