愛しい師よ、あなただけは私がこの手で殺めなければー大賢者と女剣士の果しあいー
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 街の子どもが不思議な音色に誘い出され、消える事件が続くというから、シャンガは堅牢な城壁のある街へ来た。

 もうゼウラは国のそこかしこで惨禍を起こす災害の扱いで、国の兵隊たちが兵団をつくり、現れれば討ちにいく、そういう対処をされる対象に成り果てた。

 シャンガは兵団が募集するゼウラ討伐の部隊に傭兵として参加した。

 仕掛けられた魔法の罠で、城壁上のゼウラ向かって突撃した兵たちは脱落していったが、シャンガは師のやり口を知っているという利のおかげで、生き残ってゼウラのもとに到着できた。

「ゼウラ師匠ぅぉぉおっ!!」

 鋸壁(きょへき)から軽い足取りで降り立って、ゼウラは凍り切った表情をシャンガに向けた。

「シャンガか」

 久方ぶりだった。シャンガがゼウラと会話をするのは。
 村でもの別れして以来だ。
 あとは後ろ姿を逃したり、よくて向かい合っても剣を向け、斬りかかっただけ。
 いくら名を呼んで、問いかけても答えずだんまりを通した彼が、やっと。

「師匠、貴方を止めにきました。もうどうやっても、その罪は雪げない。しかし教えてくださいませんか。なぜこんなことに乗り出したのです」
「……儂を殺して止めるかシャンガ。なら今こそ答えてやろうの、『生命』。……あと時間じゃ、それが欲しくてやったのじゃ。幼子の命を奪って凝縮する秘術。完成は近くなった、儂は望みを叶えられる、それを夢見た」
「そんな、馬鹿なっ。貴方ほどの自制に優れ我欲のない方が、いまさら不老不死などと小悪党みたいなこと……」
「不老不死ではないのぉ、せいぜい若返り、くらいじゃ」
「それでもっ! なぜ……そんなものを望む方じゃなかった、貴方は」
「そりゃ、儂を買い被りすぎじゃったの。……儂だって一個の人間じゃし、弱いんじゃよ。育てた者を大きく美しく見てしまうのは、子として仕方ないの。反抗期がないと手がかからん楽と喜ばれるが、そのまま養育者が大きく強いという誤解が去らん子は……難儀するぞ。やはり子育ては難しい」

「儂は止まらんよ。もう止められんよ。あとはお前がどうするかじゃ」
「……とめるしか、ないでしょう。だって、貴方に育てられた私は、こんなこと許せません……」

 言いながら、踏み切ってシャンガはゼウラ向かって跳躍した。
 薙いだ剣で実体をとらえられなかった。
 後方に飛び退ったゼウラは、床に立てていた剣をとる。
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