恋は秘密のその先に
「真里亜。これ、クリスマスプレゼント」

えっ、と真里亜は目を見開く。

「買ってくれてたんですか?」
「当たり前だろ?何しに来たんだ」
「あ、はい」

真里亜はおずおずと、文哉が差し出したティファニーブルーの箱を受け取る。

「開けてみてもいいですか?」
「もちろん」

白いリボンをそっと解いてから、真里亜は箱を開けた。

中に入っていたのは、ダイヤモンドが眩く煌めくネックレス。

「わあ…なんて綺麗…」

真里亜はしばし言葉を失う。

花びらのようにも、雪の結晶のようにも見えるデザインで、大きさは控えめだが、ダイヤモンドの存在感に思わず目を奪われる。

「着けてみて」

文哉が促すが、真里亜は思わず首を振る。

「私なんかが、こんな高価なもの…」
「何言ってるの?真里亜に似合うと思って選んだのに」
「いや、でもこれ…」

さっきの様子からすると、とてつもなく値が張るものに違いない。

自分にこれを着ける資格があるのか?と躊躇していると、文哉が小さく問いかけてきた。

「もしかして、気に入らない?」
「いえ!まさか。とっても素敵です!可愛くて綺麗で、ひと目惚れしました」
「良かった」

文哉は微笑むと、真里亜が手にしているケースからネックレスを取る。

「真里亜、ほら」

ようやく真里亜は頷いて、文哉から受け取ったネックレスをそっと着けてみた。

鎖骨のラインのちょうど中央に、可憐で美しいダイヤモンドの花が輝く。

「うん、よく似合ってる」

真里亜は照れて顔を赤くしながら、文哉に頭を下げた。

「こんな素敵なクリスマスプレゼントを、ありがとうございます、副社長。ずっと大切にしますね」
「どういたしまして」

にっこりと答えたあと、文哉は、ん?と眉根を寄せる。

「真里亜。なんでまた『副社長』に戻ってるの?」
「え?それは、だって。普段はやっぱり副社長としか…」
「ふーん。ベッドの中でしか名前は呼べないってことか。それなら毎晩抱くしかないな」
「ふ、副社長!こんなところで、なんてことを…」

真里亜は、日本人が近くにいないかキョロキョロする。

「ははっ!確かに、昼間は副社長って呼ぶ真里亜が、夜には俺の名前を呼んでくれるギャップを楽しむのも悪くないな」
「ですから!こんなところでそんな話は…」
「分かったよ。続きはベッドでな」
「だーかーら!副社長!」
「あはは!」

嬉しいやら恥ずかしいやら。
照れるけど幸せで…。

真里亜は胸元のネックレスに手をやり、そっと微笑む。

思いがけずニューヨーク最後の思い出は、ティファニーでの夢のようなひとときとなった。
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