恋は秘密のその先に
 人事部の仕事をこなしていた真里亜は、パソコン画面のチャット通知に気づいた。

『おい、資料を返せ』

 まるで脅し文句のような、文哉からの恐ろしいひと言。

 だが真里亜は、フンと鼻であしらって返信する。

『チームに戻してくれたら返します』

 ムッとする文哉の表情が目に浮かぶ。
 すぐさま返信が来た。

『チームには戻さん。さっさと資料を返せ。副社長命令だ』
『パワハラですか? これ、証拠になりますよ』
『うるさい! 早く返せ!』
『あ、12時になりました。お昼休みですので失礼します』

 ポンとキーを押して送信すると、真里亜はパソコンを閉じて立ち上がる。

 (ふーんだ。負けないもんね!)

 ムキー!と地団駄を踏んでいるであろう文哉を想像しながら、真里亜は不敵な笑みを浮かべた。
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