不器用な神野くんの一途な溺愛
母親は、話しの内容が気になるのか、ずっと俺の前に立っている。

出ていけよ――と、シッシッと手で払ったが、首をブンブン振って、

「ちゃんと聞きなさい」

と言わんばかりの、険しい顔をした。


ハァ。

見られながら電話するとか、めんどくせぇんだけど……。


『で、なんの用?』

『(なんの用ですか?って聞きなさい!)』

『……なんの用、ですか』


早速めんどくせぇ……。

けれど教頭は、俺のことなんてお構い無しな口調で、まくし立てるよう話し始める。


『じ、実は、入学試験で首席だった子に、入学式の新入生代表の挨拶を任せていたんだが……。今になって”出来ない”って連絡が入ったんだよ!』

『はぁ……』

『それで、その〜直前だし、言いにくいんだが、式に穴を開けるわけにはいかんし、試験で2位だった神野くんに頼もうということに、なってだね』

『はぁ!?』

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