不器用な神野くんの一途な溺愛
無事に新入生代表の挨拶が終わって一息ついた時だった。あみだくじで、交通委員を引いてしまった。
俺はうなだれた。
前夜に、兄貴が交通委員の委員長になったと家族に吹聴していたからだ。
ただでさえいい事ねーのに、同じく交通委員になった女子の亀井。俺があみだで決まった途端に、立候補してきた。
「続かねーだろうな」と思ったら案の定だ。無駄に高い声がうるせーから辞めてもらって丁度いい――そう思っていたところに、代打の小野宮だ。
俺はまた、うなだれることになる。
あの小野宮かよ――ってな。
新入生代表の挨拶を代わってやったことに感謝もされねーばかりか(学校側が”俺が代わりに挨拶をしたと小野宮に話してねーから”って分かってるが気に食わねぇ)、いつも避けられ怯えられたら、こっちが無関心でいたくても嫌いになるだろ?
しかも兄貴とセットで登場だ?
俺には怯えた顔しか見せねーくせに、好きになった兄貴には我を忘れて夢中で見てる?
『(気に食わねー)』
俺が無性にイライラするのに、時間はかからなかった。
だから言った。
『人形も、恋とかすんだな』