不器用な神野くんの一途な溺愛

小野宮が恋したっていう驚きと、積み重なった俺のイライラが混じる。悔しいなら言い返してみろよ、その口でな。

そんな苛立った俺に、立て続けに兄貴が言った、あの言葉。


『莉子ちゃんに、触らないでくれるかな』


小野宮が泣いた時、俺は小野宮の涙を拭おうと手を伸ばした。だがその手をヒラリとかわし、俺より先に小野宮に触ったのは――兄貴だ。


まるで兄貴に負けたようで、更に苛立つ。けど恨めしく兄貴を睨んだ時に、運悪く小野宮と目が合っちまった。


『……っ!』

『(あ、やべ)』


別に小野宮を睨んだわけじゃねーんだけど……。

その時の俺の顔は普段より一層怖かったらしい。兄貴の腕のせーで片方しか見えない小野宮の目が、恐怖に揺れたのが分かった。


兄貴の腕の中で小さくなった小野宮を見る。


「(小野宮とは、口喧嘩も出来ねーんだな)」


ふと、そんなことを思った。

睨んだら終わり。
言葉で攻撃したら終わり。

会話も心も、キャッチボールなんて出来やしねぇ。ケンカすら、あいつにとって「勝ち負け」は度外視だ。いかにコミュニケーションを図らず敵前逃亡するかしか考えてねぇ。
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