兵士となった幼馴染の夫を待つ機織りの妻
「だからね……あんたが嫁になってくれて、本当に安心したよ。それにこうして、可愛い孫を連れて来てくれて。雪乃さんのご両親も、今頃喜んでいるだろう」
「……はい」
雪乃は子どもの手をひいて高台にある墓地に行くと、両親の墓石の前に菊の花を添えた。周囲にはひなげしの花が咲きほこり、風に揺れている。
「お父さん、お母さん。……清隆さんがそっちに行かないように、守っていてね」
彼は再び戦地に派遣され、曹長として指揮を執っている。戦は終わったと聞くけれど、まだ帰ってきていない。
都は危ないからと田舎に疎開して二年。雪乃は立ち上がると振り返った先に、見慣れた黄土色が目に入る。
長身の軍服姿の男が、以前と変わらぬ笑顔を見せると手を振りながら駆けあがってきた。
「あなたの父様よ」
赤子の時に夫と別れたきりの子どもの手をとると、雪乃は眦を涙で濡らす。髪にさした飴色の櫛飾りが、夕日を受けてキラリと輝いた。
(おわり)
「……はい」
雪乃は子どもの手をひいて高台にある墓地に行くと、両親の墓石の前に菊の花を添えた。周囲にはひなげしの花が咲きほこり、風に揺れている。
「お父さん、お母さん。……清隆さんがそっちに行かないように、守っていてね」
彼は再び戦地に派遣され、曹長として指揮を執っている。戦は終わったと聞くけれど、まだ帰ってきていない。
都は危ないからと田舎に疎開して二年。雪乃は立ち上がると振り返った先に、見慣れた黄土色が目に入る。
長身の軍服姿の男が、以前と変わらぬ笑顔を見せると手を振りながら駆けあがってきた。
「あなたの父様よ」
赤子の時に夫と別れたきりの子どもの手をとると、雪乃は眦を涙で濡らす。髪にさした飴色の櫛飾りが、夕日を受けてキラリと輝いた。
(おわり)


