追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。

65.悪役令嬢とヒロインの取引き。

 建物の修繕費を私のポケットマナーで支払うことと今日見たライラちゃんの能力を口外しない条件で、ライラちゃんに質問に答えてもらう契約を結んだ。
 私は私を見返す翡翠の瞳をじっと見る。
 ポーションに頼らない完全回復。
 邪気が宿る石の浄化。
 一瞬で任意の場所に移動できるテレポーテーション。
 これはもう疑う余地がなく。

「ライラ、あなた一体いつの間に聖女になったの」

 聞いてませんけどと仁王立ちの私を前に自主的に正座しているライラちゃんは、

「別に聖女にはなってないですよ? あくまで聖女見習いです。能力1個解放しただけなので」

 と言って視線を逸らす。

「じゃあその格好はなんですか」

「普段着です」

「嘘おっしゃい。どう見ても聖職者の格好でしょう」

「嘘じゃないですよ? 確かに浄化魔法の取得を申告したことで聖女見習いとして神殿で修行する時に着なさいって支給されたものですが、私服これしか持ってないので」

 服買うお金なくて、とハキハキと答えるライラちゃんに、

「ロア様に贈られたドレスがいくつかあったでしょう?」

 と尋ねるも、

「動きにくいので売りました! あとコルセット辛い」

 堂々とした答えが返ってきた。
 そうかぁ、売っちゃったかぁ。
 まぁロア様なら笑って許してくれるだろうけど全くこの子は、とため息しか出てこない。
 とりあえずライラちゃんにはあとでアイリス商会で扱っている私好みの服を送りつける事にする。

「いつからその魔法が使えるのよ? 私が把握している限り野外討伐イベントなんてなかったはずなんだけど」

 エタラブ本編でヒロインが最初の聖女の力を覚醒する野外討伐イベント。
 特別クラスの野外実習があったのはセドのカリキュラムを見て確認済みだけど、討伐イベントは起きなかった。
 何故なら宮廷魔術師の師匠が研究資材調達がてら定期的に魔物の討伐に行ってしまうから。
 ヒロインが聖女覚醒するイベントが発生するために必要な"暴走する魔物"がいないのよね。
 
「んー野外討伐イベント? とやらは知りませんが、この魔法は昔から使えますよ? あと他にも結界張ったりとか!」

 ドヤっと胸を張るライラちゃんめっちゃ可愛い。
 思わず映像記録水晶(カメラ)で反射的に写真を撮ったところで。
< 156 / 191 >

この作品をシェア

pagetop