追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
「確かに、自分でももう"可愛い枠"に入るのはそろそろ限界だろうなって思ってるし、リティカにとって一番可愛いのはライラなんだろうけど。他の分野で頑張るから、せめてもう少し猶予期間が欲しい」
「………………はい?」
ん?
んんんんん?
ちょっと待て。ロア様が何を言いたいのか本当に分からないんだが。
「いきなり婚約破棄なんて。俺、可愛くなくなったらそんなに価値ない? リティカは可愛くない俺の事は視界にも入れたくないって事?」
しゅんっと落ち込んだ表情のロア様はただでさえ可愛いのに、垂れた犬耳の幻覚が見えそうで。
「……リティカはそんなに俺のこと嫌いなの?」
小首を傾げて上目遣いにそう聞かれた私は、
「ふわぁぁぁーー! 新天地!? こんなロア様見た事ないんだが!?」
あまりの可愛さに即落ちした。
「可愛いとかっこいい兼ね備えてのハニトラとかなんなの!? 私を殺しに来てるんですか!?」
情緒を乱されまくった私は今までなるべくロア様の前では抑えていた素の自分があっさり露見する。
「で、こーゆーのは嫌い?」
「大っ好物です!!」
食い気味に返事をした私をじっと見たロア様は、ふむと頷いて立ち上がり、私の座るソファに私の事縫い止めるように私の空色の瞳を覗き込む。
アレ? これっていわゆるソファドンなんじゃ……。
「じゃあ、俺の事好き?」
「みゃっ! ちょ、ロア様近っ」
その距離は婚約者として節度を保って過ごしていた今までよりずっと近くて、私の視界にはロア様の整った顔しか写らず、サラリと落ちてきた金色の髪が私に触れる。
じっと見られている恥ずかしさで、顔を手で覆いたいのに、
「ダメ。リティカは嘘つきだから、俺が見抜けるようにちゃんと顔見せて」
私の手はロア様の手でそっと外され、下に下ろされた。
ロア様の手が私の頬に当てられ、腕の中に閉じ込められた私には自分を隠すモノがなく、ただただロア様を見つめ返すことしかできない。
頬が熱くて、絶対私の顔は赤くなっている。今まで必死で取り繕ってきた全部をロア様に見透かされてしまいそうで。
私は涙目になる。
「リティカ」
そのまま近い距離でロア様が私の名前を呼ぶ。
その声はどこか嬉しそうな響きを孕んでいて。
私に向けられている濃紺の瞳はとても優しくて甘い熱を帯びていて。
勘違い、してしまいそうになる。
「本当に、婚約破棄がリティカの望み? とてもそうは思えないんだけど」
これほど近い距離でそう聞かれたら、もう嘘を紡げない。
「……っ」
引き際くらいカッコつけたくてせっかく隠した本音ごと、私の中から溢れた感情が涙になって頬を伝う。
「リティカ。俺が望めば、絶対リティカは逃げられなくなるから。だから、今ちゃんとリティカの気持ちが知りたい」
そっと涙を指先で拭ってロア様はそう言った。
一人で泣きたくて隠れても、いつも『私』を探しに来てくれるのはロア様で。
差し出される手はいつも暖かくて。
どんな時でも『リティカ』を一人にしてくれなくて。
「リティカ」
『リティカ、みーつけた』
頭に浮かぶのは、可愛い私の王子様。
この人は、どうしていつもいつも私を見つけに来てしまうのか。
「……私、は……。だ、って。結婚する気ないって、ロア様が、言って」
だから、と消えそうな私の声を拾い上げ、
「俺が? いつ、そんな……?」
ロア様は眉を顰めて思案する。
「盗み聞きして、ごめんなさい」
工芸茶をもらった時、追いかけた先での出来事を話す。
「………………はい?」
ん?
んんんんん?
ちょっと待て。ロア様が何を言いたいのか本当に分からないんだが。
「いきなり婚約破棄なんて。俺、可愛くなくなったらそんなに価値ない? リティカは可愛くない俺の事は視界にも入れたくないって事?」
しゅんっと落ち込んだ表情のロア様はただでさえ可愛いのに、垂れた犬耳の幻覚が見えそうで。
「……リティカはそんなに俺のこと嫌いなの?」
小首を傾げて上目遣いにそう聞かれた私は、
「ふわぁぁぁーー! 新天地!? こんなロア様見た事ないんだが!?」
あまりの可愛さに即落ちした。
「可愛いとかっこいい兼ね備えてのハニトラとかなんなの!? 私を殺しに来てるんですか!?」
情緒を乱されまくった私は今までなるべくロア様の前では抑えていた素の自分があっさり露見する。
「で、こーゆーのは嫌い?」
「大っ好物です!!」
食い気味に返事をした私をじっと見たロア様は、ふむと頷いて立ち上がり、私の座るソファに私の事縫い止めるように私の空色の瞳を覗き込む。
アレ? これっていわゆるソファドンなんじゃ……。
「じゃあ、俺の事好き?」
「みゃっ! ちょ、ロア様近っ」
その距離は婚約者として節度を保って過ごしていた今までよりずっと近くて、私の視界にはロア様の整った顔しか写らず、サラリと落ちてきた金色の髪が私に触れる。
じっと見られている恥ずかしさで、顔を手で覆いたいのに、
「ダメ。リティカは嘘つきだから、俺が見抜けるようにちゃんと顔見せて」
私の手はロア様の手でそっと外され、下に下ろされた。
ロア様の手が私の頬に当てられ、腕の中に閉じ込められた私には自分を隠すモノがなく、ただただロア様を見つめ返すことしかできない。
頬が熱くて、絶対私の顔は赤くなっている。今まで必死で取り繕ってきた全部をロア様に見透かされてしまいそうで。
私は涙目になる。
「リティカ」
そのまま近い距離でロア様が私の名前を呼ぶ。
その声はどこか嬉しそうな響きを孕んでいて。
私に向けられている濃紺の瞳はとても優しくて甘い熱を帯びていて。
勘違い、してしまいそうになる。
「本当に、婚約破棄がリティカの望み? とてもそうは思えないんだけど」
これほど近い距離でそう聞かれたら、もう嘘を紡げない。
「……っ」
引き際くらいカッコつけたくてせっかく隠した本音ごと、私の中から溢れた感情が涙になって頬を伝う。
「リティカ。俺が望めば、絶対リティカは逃げられなくなるから。だから、今ちゃんとリティカの気持ちが知りたい」
そっと涙を指先で拭ってロア様はそう言った。
一人で泣きたくて隠れても、いつも『私』を探しに来てくれるのはロア様で。
差し出される手はいつも暖かくて。
どんな時でも『リティカ』を一人にしてくれなくて。
「リティカ」
『リティカ、みーつけた』
頭に浮かぶのは、可愛い私の王子様。
この人は、どうしていつもいつも私を見つけに来てしまうのか。
「……私、は……。だ、って。結婚する気ないって、ロア様が、言って」
だから、と消えそうな私の声を拾い上げ、
「俺が? いつ、そんな……?」
ロア様は眉を顰めて思案する。
「盗み聞きして、ごめんなさい」
工芸茶をもらった時、追いかけた先での出来事を話す。